第3話:ライバル参戦

「はあ、まいったわ……」




翌日、私は街中にある『空繰遊戯総合センター』に足を運んだ




ここでは飛行少女達のレース登録場や現成績掲載表、ジム、仮想VRトレーニングなど様々な設備が用意されている




「あら、久しぶりね」




私が空繰センターに入ると、顔見知りの飛行少女達が声を掛けてくる




「空繰センターに来たがらないあんたがここに来るとは、珍しいわね」




私は適当に愛想よく挨拶をして受付に向かう




「おはようございますホープちゃん。今日はどのようなご用件でこちらに来ましたか?」




笑顔が似合うツインテールの受付嬢。昔から、お世話になっている女性であるが、お節介すぎる点がある




「おはよう受付嬢さん。えっと……私、関ケ原のレース出場を一回辞退したんだけども、それを撤回する事って出来る?」




非常に申し訳なさそうに私は受付嬢に尋ねる




「ホ、ホープちゃん!?い、今何て!?」




「関ケ原レースに出場したいのよ。出来るかな?」




するとこの受付嬢、いきなり涙を流し始めた。




「な、なんと……あの実力はあるのに、中途半端な考えで向上心がなく中々行動に移さないホープちゃんが……嬉しい!お母さん嬉しいわ!」




そう言って受付嬢はわんわんと泣き始めた




それはそれとしてさりげなく私の事をディスりやがったな




てか受付嬢!声が大きい!皆見てるから!




「出来ますよ!いえ、その言葉を待ってました!ホープちゃんは元々出場権が与えられてましたから!撤回も可能ですよ!何なら書類、すぐ作る!?お母さんが一緒に書いてあげるから!」




「い、いいよ!それに私、あなたの娘になった覚えとかない……!」




「ちょっといいかしら!」




背後からよく通る綺麗な声が聞こえ、私たちの会話を遮った




振り向くとそこには空色のロングヘアーをした可愛らしい少女がいた


歳は私と同じぐらいだろうか


薄紫のシアーブラウスにピンクのロングスカート姿


それこそ、レイナがいなければ惚れてしまうほど美しい少女だ




「あなた誰?」




「ふうん、あなたがホープなのね。生で見るのは初めてだわ」




そう言って、少女が近づく。ふと優しい甘い香りが私の鼻をくすぐった




「えっと、名前を聞いてるんだけども……」




「失礼。産まれはアメリカ、今は備前国(旧岡山県)に住む飛行少女・ルミナスよ!本名はルイーダ・オーストリムだけど、ルミナスって呼んでね!」




「ルイーダ・オーストリム……って、もしかして貴方オーストリム社の……」




「そうよ!そして、やる気のない貴方に鞭を振るう為にやってきたライバルなの!光栄に思いなさい」




「えっと……つまり、貴方がレイナの婚約者?でもないか。青年ってソフィアさん言ってたし」




「ざんねーん。その青年は私のお兄様よ!お兄様とあそこのお嬢様が結婚すれば、我が企業は安泰というわけ」




「つまり完全な政略結婚ってわけ?そんな事の為に私達の仲を引き裂こうとしたのね!それで、私を関ケ原に送るようにした理由は?」




悪気のない笑顔で私の前に立つ美少女に問う




「私も関ケ原に行くのが目標だからよ。ライバルがいた方が燃えるでしょ?」




「それだけの為に……」




「というか、私あなたのファンだったのよ!」




「え?ファン?」




「ええ。貴方は明らかにここ、南海道連合郡(旧香川県)で終わる器ではない。なのに貴方はそこで終わらそうとする。名刀も斬らねば宝の持ち腐れ」




「ちょっと待ってよ!ファンなのは嬉しいけど、そこまで強要されるなんて迷惑と思わないの?」




「何で怒ってるのよ!?」




「そりゃあ婚約の邪魔をしたからに決まってるでしょ!そもそも、貴方の実力は?関ケ原レースに出るって事はかなりの実力とみたけど?」




関ケ原レースに出る条件は厳しい。西日本の飛行少女達はどこかの地方で好成績を稼いだ上に、旧大阪府である大和連合国からの招待状が必要となるのだ




「ああ、その事ね。外国推薦枠をご存じ?」




そう言ってルミナスはスマホを操作し、私に見せる




「アメリカにて……10戦8勝残り2敗は2着。しかも新人レースから長距離ばかり……なるほどこれは確かな実力のようね」




「今、日本では圧倒的スタミナがある飛行少女が少ないからね。簡単に貰えたわ。というわけで、関ケ原に向けてお互い頑張りましょう」




そう言ってルミナスは私に背を向け歩き出す




「ってちょい待ち!私まだ了承するだなんて言ってないんだけど!!」




「あなた言ってたじゃない。関ケ原にエントリーするから手続きするって。楽しみにしてるわよ」




そしてルミナスは去っていったのであった




ああ!もうどうにでもなれな気分だわ!




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