第48話 刺客

「ここまでこれたということは、敗れたのか…………クロサキと王国の双頭が……」


 王座の前に入ってきた俺や二人の姿を認めた王は頭をかかえる。


「貴様ら頭が高い、王の御前であるぞぉ!!」


 エスペリア王の傍らにいるセリーナが吠える。

 

「だぞうじゃ、ラナ」

「悪いが礼儀を知らなくてね」


 二人は飄々と答える。

 俺が黒崎を倒して向かうと、二人はすでに王座の間の前で平然と俺を待っていた。

 聞くと特に苦戦もせずに倒したという。

 

「貴様はエドワード…………そうかやはり、帝国からの刺客か……」

「久しぶりですな、陛下。二度も異世界召喚など馬鹿なことをしましたな」


 エドワードがそう述べるやいなや、エスペリア王は顔を真っ赤にさせてまくしたてる。

 

「誰が馬鹿なことかぁ!! もう少しだ、後もう少しで、ヴァレンティンに目にもの見せてやれるところを邪魔するなぁ!!」


 エドワードはラナに視線を移して肩をすくめる。


「聞いてた通りの馬鹿王だねぇ」

「おい、女ぁ。口に気をつけろ? 楽に死ねなくなるぞぉ」

「ああ? お前こそ、ラナ様への口の聞き方に気をつけろ。今すぐこの城中、火の海にしてやろうか?」


 ラナは王に対して凄む。

 

「ラナ…………くっ、帝国の守護魔術師ガーディアンメイジまで来ているのか……」

「陛下の私怨で一体何人の罪なき人々を犠牲にさせましたかのう」

「ああ? 平民など王に奉仕してこその存在。その命をわしの為に役立てられるなら、逆に本望じゃろう?」

「一体どんなお花畑だったらそんな思考になるのかね」

「陛下のおかげでエスペリア王家は終わりですな」

「何を、まだわしにはセリーナがおるわぁ!」

「はい陛下、お任せ下さい!」


 セリーナは前に進みでる。


「まさか帝国の守護魔術師ガーディアンメイジまで来ていただけるとは。歓迎いたします」


 セリーナは不敵な笑みを浮かべながら言う。


「ふん、生意気な。相手をしてあげたいとこだけど、あいにくあんたには先約がいてねぇ。ユウ」


 俺はラナに言われて前に進み出る。


「…………誰だ、お前は?」


 二人は怪訝な顔をする。

 俺を覚えていないようだった。


「ひどいなあ。わざわざ異世界召喚してまで、奈落のダンジョンへ追放してくれたじゃないか」

「っ!? あの無能が? なんで生きて…………」


 セリーナは目を見開いて驚く。


「そりゃあ、奈落のダンジョンから生還したからに決まってるだろ。お陰様で強くなれたよ……」

「そんな馬鹿な……今まで誰一人として、生きて戻ってきたものはいないのに……」

「あの時、言っただろ。お前ら絶対に殺してやるって。こうして、借りを返しに戻ってきてやったぞ!」

「はあ、借りを返すですって? どんなまぐれが起こったか知りませんけどねぇ、無能が私に勝てるわけがないでしょう!!」


 セリーナは興奮した様子で目をひん剥いて言う。


「気をつけろ、ユウ。奴は時空間魔法を使うと聞く」


 俺はエドワードに黙って頷く。

 

「下賤な異世界人のしかも無能が…………高貴な者に対する態度というのを教えて差し上げますわね」

「高貴な者? 性格と倫理観がゴミのお前が何言ってんだ。大体お前は何が目的で異世界召喚なんかしてんだよ?」


 俺の罵倒でセリーナの顔が怒りから赤く染まる。

 

「ぐっ、誰がゴミよぉ! 王の願いを叶えるために決まってるでしょうがぁ!!」

「嘘つけ。どうせ金か権力、そのどちらかだろう?」

「権力じゃ。その女がそもそも禁忌の異世界召喚を持ち出した元凶。その功によって王国の魔術師筆頭で王の右腕にのし上がっとる」


 後方のエドワードから情報がもたらされる。

 

「お前も罪のない人々を死に追いやったという訳だな…………」

「はっ! 他人を蹴落として、のし上がることの一体何がいけないのでしょうか? 他者の犠牲の上に私の地位があるのだとしたら逆に興奮してしまいますけどね」

「なんだそりゃ。お前も遠慮の必要がないクズだということがよくわかったよ」 


 俺は腰の星絶断刃スターブレイクブレードを抜く。

 剣の絶大なる力によって周囲の空気が震える。


「無能がぁ、身の程というものを教えて指し上げますわよぉ!!」

 

 セリーナは杖を掲げて、間髪入れずに魔法発動させた。

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