第43話 正面突破

 翌日、なぜかニヤニヤとしたノラに送り出されて、俺たちはエスペリア王国へと馬を走らせる。


「寝不足かもしれんが、落馬せんように気を付けての」


 なぜエドワードは俺が寝不足であると知ってるんだろうか?

 ……もしかして夜の声が漏れてた?

 フェリシアは一生懸命に声を漏らさないように頑張ってたけど。

 その姿もまた可愛かったなあ……。


「危なっ」


 気がつくと目の前に木の枝があり咄嗟によけた。


「ぼけっとせんと。何か良いことがあったのか知らんがのう」


 エドワードもノラと同じようなニアニア顔を俺に向ける。

 むう。バレてるのか? これも年の功なのか?

 俺は解せぬ気持ちのまま、エスペリア王国に向けて馬を走らせた。




 

「それで帝国の守護魔術師ガーディアンメイジって人は誰ですか?」


 エスペリア王国の待ち合わせ場所に着いたが、それらしい魔術師のローブを着た人はいなかった。

 

「私よ」


 声をかけてきた女性はショートカットに黒のパンツと動きやすそうなベストに長袖シャツを着ている。

 杖も持ってないし、とてもじゃないが魔術師には見えずにスタイリッシュな印象をうける。


「ラナ、お前のその服装わざとじゃろ」


 エドワードが言う。


「別に……魔術師だからってローブ着ないといけない決まりはないでしょ」


 腰に両手を添えて女性は述べる。


「王宮にいるときにはローブを着ておるじゃないか」

「あら、着ない時もあるわよ」

「それは新任が着任したり、お前を知らんものが来訪してきて驚かせたいだけじゃろ」

「ふふふ、まあ正直それもあるけど、私本気で戦る時にはこのスタイルなの。ユウ、でよかったわよね。宜しくね」


 ラナは俺に手を差し伸べる。


「ユウだ。よろしく、ラナ」


 俺は応えて、握手を交わす。


「それじゃ早速いくかの」

「腕が鳴るわねー」


 二人は悠々と城の方へと歩みはじめる。


「えっ……まさか正面から乗り込むの?」

「そうじゃが?」

「押し入るんだから、ノックして入るわけにもいかないでしょ?」

「いや、そうだけど……裏から奇襲したりとか色々考えようはあると思うけど……」

「ユウ、勘違いしてはいかんぞ。わしらは別に挑戦者じゃないんじゃ。挑戦者はあの王城にいる兵士たちじゃぞ」

「そうよ、私たちは胸を貸して上げるの。強者が弱者に気を使う必要はないでしょ」

「…………」


 どうやらこの二人はかなりいかれてるらしい。

 俺はそれ以上の問答を止めた。


「そうじゃ、ユウ。一つだけアドバイスをしておく」


 王城は目の前で衛兵がこちらを咎めようと近づいてきていた。


「これから先は戦場じゃ。一切の遠慮と躊躇をするな」


 エドワードはそう述べた後に、袈裟斬りで近づいてきた衛兵を問答無用で斬り捨てる。

 直後、衛兵の怒号と襲撃を知らせる鐘が城に鳴り響いた。


「さて、忙しくなるぞ」

「お客さん、もう集まって来たわね」


 兵士は直ぐさま、ぞろぞろと集結してきていた。

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