第1話
春の到来を告げるお祭りの日、ここシルバーリーフ村は賑わいに満ちていた。
色とりどりの提灯が揺れる中、子どもたちの無邪気な笑い声が響き渡り、大人たちは友との語らいと酒や料理を楽しんでいる。
そんな中、僕は両親と妹、そして幼馴染のリリアと共に広場へと足を運んだ。
こんな田舎の村ではなかなか普段娯楽になるようなことはないから、春と秋のお祭りは大賑わいだ。
そして祭りを口実に昼間からお酒を飲んでる。
僕は飲めないけども……。
僕はエドモンド。
村の鍛冶師として働き、日々、武具を作ることに情熱を注いでいる。
いつの日か伝説に残るような武具を作ってみたい、そんな憧れは恥ずかしくてなかなか言えないけども、いつかきっと成し遂げてやる。
少し日が落ちてきた頃、村の広場には外からやってきた一人の冒険者、ジェレミーが姿を現した。
彼の風貌は旅の疲れを感じさせたが、その目には経験からくる落ち着いた光が宿っていた。
彼が語り始めると、広場は一瞬にして静まり返った。
「皆さん、私が先週この村の近くにある森の奥で見つけたものをお話ししましょう。それはこれまで人目に触れることがなかった古代の遺跡です。」
僕はこの話に心を奪われた。
数日前から僕は自分が未知の場所で光り輝く何かを手にする夢を見ていた。
何度も、何度も。
夢と現実の奇妙な一致に、心の中で何かが動いた。
「その遺跡には荘厳な石の門があり、まるで別世界への入口のようでした。しかし、一人ではその奥へと進む勇気が持てませんでした。門からのぞいた遺跡の中では魔力が立ち込め、不穏な空気が流れてたからです。私の直感がまだやめておけと言ったからです。」
ジェレミーの話を聞いて、僕の心には冒険への渇望が募っていった。
そしてお祭りの喧騒の中で僕は1つの決断を下した。
ジェレミーの言葉が、僕の夢と内に秘めた願望を結びつけたんだ。
お祭りが終わり、人々が家路につく中、僕は夜空を見上げていた。
僕の心は、遺跡探索への決意でいっぱいだった。
そして幼なじみのリリアもこの冒険に興味を持っていた。
僕はそれに気付いていた。
彼女は神官見習いで、古代の知識に精通している。
古代の遺跡となれば、神にまつわる遺物も多く発見されており、きっと神殿でも探索を試みるだろう。
僕とリリアは無言で頷き、帰宅した。
その夜、僕は鍛冶場で剣を鍛えながら、古代遺跡に強く惹かれていた。
僕の目的は、より強力な武具を作るための珍しい素材を見つけること。
いつだったか、叔父であるアルトン警備隊長が魔物と戦うのを見たとき。
アルトンは父さんが作った武器を使って戦っていた。
その姿に僕は純粋な憧れを抱き、そして武器の凄みを僕の脳裏に鮮明に焼き付けた。
それ以来僕はアルトンのもとで剣術に励み、父のもとで鍛冶師として修業を積んできた。
いつかきっと凄い武具を作る。
そしてその武具を使いこなしてみせる。そんな想いを持ち続けてきた。
古代遺跡の中には、夢に見たような神秘的なものがあると信じた。
あの光り輝くものは絶対にそうだ。
僕は眠りにつくと、再び同じ夢を見た。
その夢の中では昨日より鮮明に、僕が遺跡の中で光り輝くものを手に入れる場面が見えた。
夢の中で感じた喜びと興奮は、僕を目覚めさせると同時に、遺跡での冒険への期待を一層高めた。
翌朝僕は家族に想いを打ち明ける。
「父さん、母さん、アリシア、昨日のお祭りで聞いた話をしてもいいかな?」
父であるハーウェルは頷き、母エレナと妹のアリシアも興味津々の様子でエドモンドに注目した。
「父さんたちも聞いてたよね?森の奥に古代の遺跡を発見した話。そこには、今まで見たことのないような素材が眠っているかもしれないって思うんだ」
母親がやさしい笑顔で言った。
「あなたにとって興味深い話だったわね。でも、森の奥は危険だわ」
僕は熱くなりながら答えた。
「そうかもしれないけど、もし本当に珍しい素材が手に入ったら、僕の鍛冶の技術はもっと上がるかもしれない。それに……」
僕は少し躊躇いながら話を続けた。
「実は、数日前から同じ夢を見ているんだ。未知の場所で光り輝く何かを手に入れる夢で、今日の冒険者の話を聞いて、それが遺跡の中のことかもしれないって思ったんだ」
父さんは少し心配そうに眉を寄せたが、僕の情熱を理解しているようだった。
「エドモンド、お前が本当に行きたいと思うのなら、止めはしない。なぜ突然遺跡が見つかったのかはわからないが、お前の剣の腕はなかなかのものだ。だが、無理はするな。そして、何かあったらすぐに戻ってこい」
妹のアリシアが小さな声で言った。
「気をつけてね。私、お兄ちゃんが心配だよ」
僕は家族の顔を見回し、感謝の気持ちを込めて頷いた。
「ありがとう、約束する。気をつけて行ってくるよ。そして、きっと凄いものを持って帰ってくるからね!」
家族は僕を応援してくれた。
ありがたいな。
そして村にある小さな神殿に行き、そこでリリアを見つけた。
彼女のお父さんはこの村唯一の神官で、彼女はとてもきれいな神官見習いだ。
彼女は幼馴染でずっと一緒に育ってきた。
昔は一緒にかくれんぼなんかもした。
少し悪戯好きなところがあって、何度も驚かされたような……?
まぁ、可愛いからそれで怒ることはないんだけども。
年齢が上がってからはちょっと気恥ずかしくて距離があった時期もあった。
でも、成人して働き出してからは再び仲の良い友人だ。
「おはよう、リリア」
「あら、エド。おはよう」
リリアは僕の方を向いて親し気に挨拶を返してくれる。うん、今日もきれいだ。
長い金髪を編み込んで垂らし、その清楚な外見はまるで古代の神話から飛び出してきたかのようです……とか言えば少しは伝わるかな?
えっ?下手な比喩表現をするなって?
すみませんでした。
「どうしたの?こんな朝早くから」
「僕は昨日聞いた遺跡に行こうと思うけど、リリアも一緒に行かないか?きっと興味はあると思うんだけど。」
僕はせいいっぱい落ち着いてリリアを遺跡探検に誘う。
「もちろんよエド。昨晩お父様と話したの」
リリアはエドモンドに親し気な表情を向けながら少し高揚した声で言葉を返す。
「本当!?それで……なんて言ってた?」
「お父様はぜひ神殿として調査をしたいと言っていたわ。でも、そこに潜む魔物がどんなものか、危険性が読めなくて悩んでいるようだった。昨晩遅くにラインランドの神殿に支援要請を出していたけどきっとかなりの時間がかかるし、悩んでるだけでは何も始まらないから今朝になって私が調査に行くのは認めてくれたの。エドと一緒に行くこと、危険を感じたらすぐ引き返せって言ってたけど。」
リリアのお父さんであるジュラ―ルはこの村の神官だ。
この村にあるのは小さな神殿であり、神官は一人しかいない。
高齢であまり神殿の外に出ないが、昔は王都で修業を積んだ立派な神官だ。
そして僕らに魔法を教えてくれる先生でもある。
回復魔法・支援魔法に加えて水・聖・風・地・木の属性魔法を使えるリリア。
剣士ではあるが火・光・地・風の属性魔法が使える僕。
2人ともジュラ―ル様に魔法を教わってきた。
ジュラ―ル様は全て使える上に、いくつかの合成魔法まで使える。
なんで神官なんだろう。
かなり高位の魔法使いだ。
火と風のファイヤーストームとか超かっこいいんだ。
いつか使いたいと思って練習することはや3年……向いてないとか言わないで(涙)
そしてラインランドはこのシルバーリーフ村から馬で2日の距離にある、この辺りでは大きな街だ。
そこにある神殿は大きく、神官もたくさんいるし、神官兵や騎士もいる。
でもそういった戦力を動かすには偉い神官に報告して指示を仰がないといけないから平気で1か月とかかかるんだろうな。
僕はリリアの父である神官ジュラールに信頼されていることに喜びを感じつつ、身を引き締める。
「やった!じゃあ一緒に行こう!ちゃんと守るから!」
「うん。エドと一緒なら心強いわ。よろしくね。」
「あぁ、任せて!そうと決まれば準備して、さっそく行こう!」
そうして、僕らは探検の準備を始めた。その心に明るい期待を灯して。
とても楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます