レッテルを貼って貼られて

朝香るか

第1話妊娠

 最近体調が悪かった。

 妊娠検査薬を使ったら陽性だった。

 それがわかってこの気持ち悪さはつわりというものなのかと納得した。


 さっそく翌日、産婦人科に向かう。

「おめでとうございます。妊娠2か月です」

 息をのむ。これでキツイ妊活生活が終わる。

 嬉しかった。これで姑からのプレッシャーから解放される。


「さっそくご主人に報告するといい」


「はい。これからよろしくお願いします」


 これから検診は火曜日に行われることになった。

 会計をすませ、自宅に帰った。妊娠が判明したせいなのか、緊張しすぎたのか体がだるくどうしても家事をする気にはならなかった。


「もろもろの手続きもあるし、今日は有り合わせのもので勘弁してもらいましょう」

 夫に申し訳ないが、いろいろな匂いが苦手になっているのだ。

 職場に連絡し、もろもろの事情を説明し今後についても話が出た。

 今のご時世でクビにならないだけありがたい。


「もやしはまだ大丈夫だわ」

 もやしを使った副菜はなんとか作れたが、今夜は袋麺で我慢してもらおう。


「今日はどうしたんだ? 夕食も作らずに」

「ごめんなさい。実は妊娠したの2か月だそうよ」

「本当か? つわりはどうした? 体がきついようなら休んでくれ」


「ごめんなさいね。ちょっとだるいの。あと、安定期までは義母には黙っていてくれないかしら?」

「いいけど。どうしてだ?」

「万が一何かあって、がっかりさせたくないのよ」

 義母とは関係は良好だ。少し孫に対する期待が大きいことを除けば。

 

 夫曰く大した家柄でもなく、歴史もないらしいのだ。

 義母曰く明治時代から続いている名家なのだそう。今の時代に名家も何もないのだが、いまだに家柄を誇りとしている。


 義母の話にはもう亡くなった義母の両親の話がよく出てくる。

 昔を大切にする人なのだ。


 きっと育児に対してもそうだろう。

 妊娠中の過ごし方も知らせれば指導が入るはずだ。


 昔は妊娠していても家事は完璧にするのが当たり前だというだろう。


 本当に昔の人は完璧にこなしていたのかはともかくも、

 義母の言うことならば聞かないといけなないだろう。


 主人はそこのところを察してくれたのだろう。優しい言葉をかけてくれる。


「わかった。これから日常は注意してすごすんだよ」


「ええ。職場にはもう連絡してみたわ。人数調整ができ次第、時短勤務に切り替えてもらえることになったから。収入面では迷惑を掛けてしまうけれど」


「そんなこと問題じゃない。産むことだけに集中してくれ」

「ええ。ありがとう」

 この人と結婚してよかったと思った。

 夜は早く休ませてもらい、朝になったら仕事に向き合う。

 妊娠が判明してからカフェインは控え、

 温活を徹底的にしていくことにしている。


 短時間勤務になったとはいえ、

 まったくカフェインをとらずに仕事をするのは緊張する。


 これまでは仕事でミスをしないように多少カフェインは摂っていた。

 まったくないとなると緊張感はなくなる。


「困ったものね。しっかりと体調管理していかないとね」


 つわりはそれほどひどくはないものの、やはり匂いで体調が悪くなったり集中力がなくなったりしている。

 体は着々と母になる準備を始めている。


 夫と相談して家事をしてもらえるのも大きい。

 職場でも家庭でも自分は弱ってきていた。

(だいぶ甘やかしてもらっているな)

 仕事ではカフェインレスコーヒーを飲んでいるが、

 仕事でミスをするのではないかとひやひやしている。

「もう上がっていいわよ」

「はい。ありがとうございます」


 さりげなく気にかけてもらえるので、短時間勤務も罪悪感なくこなせている。

 復帰したらきちんと働いて恩返しをしないとならないだろう。

 打刻して、ふと思う。


(明日は検診日ね。何事もないといいけれど)

 時間を調整してから時間の経過が早い。

 妊娠してウキウキしている反面、

 だるさや体調がすぐれないからすぐに次の検診日になる。


 どう成長しているだろう。ウキウキとしながら検診日を楽しみにしていた。





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