児童文学

『それいけズッコケ三人組』(那須正幹)【★★★】

 つばさ文庫への公募用作品を書くため、過去に私が面白いと思っていた児童小説を読み返してみました。


 ……なにこれ、めちゃくちゃすごいんですけど(笑)。

 大人になった今また読んでも面白い!

 小学生の時、夢中になって読んだ、あのズッコケ三人組がそのまま私の目の前に、生き生きと蘇りました。


 確か、小学校五、六年生向けだったかと思います。

 でも、うちの小学三年生になる息子も、面白いと言って夢中になって読んでいました。それは、何故か?


 この物語が、子供の視点で書かれているからです。


 大人になった今だからこそ分かるのですが、主人公であるハチベエ、ハカセ、モーちゃんの三人は、紛れもなく小学六年生の男の子なのです。大人が子供の皮を被って無理して書いているわけでは全くない。

 ああ、こういう子いるよなぁ、というリアルな小学男児を、そのまま書くのではなくて、彼らの個性を際立たせて面白く書いてあるのです。

 キャラクター小説と言っても過言ではありません。


 冒頭から、トイレの中でだけ秀才くんなハカセが登場します。

 こんな面白いキャラ、他にいます?

 トイレネタは、小学生好きそうでしょう!(笑)

 下品すぎないところが、良い!

 それに、何となく分かるんですよねぇ〜。

 トイレに座っていると落ち着く気持ちが(笑)。


 登場するキャラクターが物語を動かしているから、面白いのです。

 そして、子供心をくすぐる悪戯がストーリーにスパイスを加えています。

 剣や魔法、宇宙人、ゲーム……そんな非現実なんてなくても、こんなに面白いのです。現実世界の小学生は。

 ちょっとこれは……すごすぎる。真似できない。

 というか、超えられない。圧巻です。


 そして、この作品って、最初は短編だったのですね。

 きっと小学生の集中力のなさを先生は理解している!(笑)

 途中から長編になっていくのですよね~。


 しかもこれ、一人称じゃないんですよ。

 児童文庫は、一人称じゃなきゃ分かりにくい、という現在の概念を見事に覆してくれちゃっています。

 言うならば……神視点?

 そもそも主人公が三人いるので、視点も三人分、ころころ変わります。

 群青劇に近いかもしれません。

 それなのに、地の文の途中に、ハチベエの心の声が出たりします。

 人称とか視点とかごちゃごちゃ考えないでも、こんなに分かりやすくて、面白い作品が書けるんですよ。

 

 これを読んで、つまらないって言う人、いるのかな?

 いたら、むしろ教えて欲しいです。

 何が面白くないのか(真剣に)。


 確かに、内容は、書かれた時代が時代なので、古くささは否めません。

 女の子の描写とか、女番長が出てきたりとか(笑)。

 若干、今の時代だと受け入れられにくい偏見に近いものもあるので(もちろん些細な内容なので、よくよく見て考えないと気づかないと思います)、これはリメイクする余地がある、ということ。


 ……私が何を考えているか、わかりますでしょうか?w

 

 もうね、つばさ文庫に応募する作品は、これしかないと考えています。

 もちろん、方向性として、ですよ。

 

 私の中で、この作品を超えられる面白い児童小説は、ありません。

 断言してもいい。


 那須正幹先生は、生前に仰っておりました。


 子供たちがポテチを片手に食べながら楽しく読める作品を、と。


 ……私は、本が汚れるから、嫌だけどw


 あとは……こんなに面白いネタを私が思いつけるか、が問題だ( ´ ཫ ` )


 

 

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