第16話 くだらないこと
彼のことは常々、変な人だと思っていた。だけれど孤独にも耐えられるほど強い人間なのだと思っていた。
……
ただの面倒くさい人だった説が浮上してきた。
「……こだわり……?」
「はい……じゃなくて、うん。敬語を使う使わないにはこだわりはないよ。僕が敬語のほうが喋りやすいだけだからね。だから……タメ口で喋れと言われたらそう、するよ」
相変わらずカタコトだなぁ……ボクみたいな喋り方だ。
「でも、
「……こだわりって、なに?」
「それをあなたに告げると、あなたを傷つけることになり……なる。だから言いたくない」
「はぁ? 自分から言い出して?」
「……話しかけてきたのはそっちなのに……」それはそう。「とにかく、私はチームには入らないよ」
「納得できない」
……なんで
と、ここで事態を見ていた
「待てよ。2人とも熱くなるなって」
「なってないよ……!」熱くなっている人は毎回そう言う。「こいつがわからず屋で頑固すぎるだけ」
「……似た者同士だな……」たしかに。頑固なのは
「ケンカじゃない」ケンカだろうに。「私はただ……クラスみんなで仲良くしようとしてるだけじゃん。なのに……こいつがさ」
仲良くしたくない人だっているということだ。
きっとどちらも正しい。間違っているということはない。クラスみんなで団結したい
ただ2人が合わないというだけ。どちらも間違っていない。
だが往々にして、人は正しさを求めたがる。本当に正しいかどうかなんて関係ない。自分が正しいと思うほうにつくのだ。
「そうだよ
「そうそう」それは他の取り巻きにも伝染していく。「せっかくクラスの仲間なのに……参加するだけで団結できるんだよ? それにクラス全員で参加すればさすがに優勝できるでしょ」
頭数だけ揃えたって意味ないと思うけれど。
10人いようが100人いようが1000人いようが……烏合の衆では意味がないと思うけれど。
「……
ボクは思っていないけれど。
でもこれがクラスというものだ。学校というものだ。カーストというものだ。どれだけ1人になりたくても関係ない。巻き込まれてしまえばそれまで。
ボクはずっとその流れに流されてきた。逆らうという気力も起きず、巻き込まれ続けてきた。それでいいと思っていた。
「……それは……」
きっと
だけれど彼にはそれができない。優しくて平等な彼は、取り巻きたちの意見を無視できない。だって……どちらも間違っていないのだから。
黙っている
「まさか
……
この流れはマズイ。
だからこそ対立を鎮められない。協力を先導することはできても、争いを終わらせることはできないのだ。
明らかに
だけれど……彼はそれをしないのだろう。
優しい王の、唯一の弱点だ。
この流れは誰に求められない。トップカーストに入った亀裂は修繕できない。クラスが崩壊するレベルの亀裂になるかもしれない。
どうすれば良いのだろう……? わからない。ボクはただ呼吸を苦しくして立っていることしかできなかった。
そんな緊迫した空気の中、
「……フフ……」不意に小さな笑い声が聞こえた。「くだらないこと言ってますね」
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