第二話 

「イレール。旅に行くよ!」

優雅に紅茶を飲んでいる僕の側近に声を掛ける。

「…いきなり、なんですか?リュラ様?」

コトリ、静かに紅茶を置きながら言う。

「えー、だめかな。急に言って」

「いえ、駄目って訳ではなく。旅に出るという意味が、分からないんですけけど…。それに、今から勇者来ますよ?リュラ様?」

「それは、分かってるよ」

勇者なんで今頃来たんだよ。この500年に一度のときに。

あぁ兄さんか姉さんに譲ればよかった、魔王の座。

「でも、今は旅に出たいんだ。だから…ね?」

「‥ね、とは?」

「今から、ね?」

イレールの手を掴み、勢いよく窓から飛び降りる。

「ちょ、リュラ様!いきなりなんですか…アアァァ!!」

突然の浮遊感にイレールは声を上げる。

「ごめんね…イレール!」

水面にぶつかる瞬間、漆黒の羽を出し、上に飛び上がる。その際、イレールの半身が水に使ってしまった。

「リュラ様!もう!本当に何をするんですか!?この服、お気に入りの一つだったのに…!」

本当にごめんね。イレール。

さてさて、どこで降りようかな〜。

「あ、あそこちょうど良さそう」

そう呟く先には、森の開けた場所があった。

「リュラ様、本当に何をしたいんですか?急にこんなことをして…今すぐに城に戻らないと、行けません‥うわぁ!!ちょっ」

手を上げ、イレールを上げる。

「降りたら言うよ」


フワリ…森の中心部らしきところに降りる。

地面と距離が近づくたびに魔者が逃げてゆく。

「…」

やっぱり外は気持ちがいい。

あの寒々した城と違って暖かい。

「リュラ様?本当に何をしたいんですか?」

「旅をすること」

手で丸い球体を作りながら言う。

「旅って…もしかしてあれですか?女神ですか?」

「うん。そう。‥あっ、イレール」

「なんですか?」 

「ほいっ」

球体からネックレス出し、投げる

「なにか叶えたい願い事とかあるんですか?」

手を下げ、ネックレスを取る。

「あるよ」

指輪をつけながら言う。

「そうですか。…分かりました。今は‥城は非常時ですか、着いて行きましょう」

「ありがとう。イレール」


一方その頃、魔王城では


308室 

よく日が当たる部屋で、顔立ちの似た男女がトランプをしている。

「ヴィヴィアン、勇者ってどんな人だと思う?」

「勇者?…女じゃないかな」

「女?なんでそう思うの?」

「んとね、それは‥」バンッ! 

「誰だ!ノックもしないで扉を開けたやつは」

ロランスとヴィヴィアンは、扉へと歩を進める。

そこには、犬頭の魔物がいた。

「ご報告です!」

……

「魔王様、イレール様はどこに行った?」

「勇者が、門番を破った」

「あー!せっかく、作った前魔王様の像が!肖像画が!」

「アロイス様を出せ!」

「アロイス様だけでは、心配だ。マノン様も出せ!後は…」

「うわっ、焦げた。やっぱ、作りたての魔法陣は駄目だな」

「勇者が第二門破ったぞ!」

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