人間に恋したまおう様のお話

ころこね

第一話

「ねえねえ、母さん。また、あの物語話して」

「リュラ、本当に好きね。イレール、持ってきて」

ドアの側で、立っている少年に指示を出す。

「はい」

静かに、イレールは部屋を出る。

少しして、大きめの漆黒の本を持ってきた。

表紙には、光り輝く女神が描かれている。

母は、ゆっくりと開き、優しく語り始めた。


昔々、あるところに臆病な勇者様がいました。

魔物と会えば、すぐに仲間の背に隠れ、子供にも泣きつくような人でした。

そんなある日彼らは地下深くに眠る神殿を偶然見つけました。

初めは、みんな中に入ることを躊躇っていましたが、後から来た他の人々に攻撃を受け、仕方なく中に入りました。

神殿内は、迷路のように入り組んでいてトラップもあり、命を落とした人達が転がっていました。

理由も分からないまま、神殿を奥深くまで進んでいると突然、開けた黄金の場所に飛びました。

なんと!そこには

白い雲の上で、大きな羽を撫でている女性がいました。

勇者一行と目が合うと、ゆったりした声で女神様は言いました。

「お主ら、よくぞここに来た。褒美として、一つなんでも願いを叶えてやろう」

「なんでも…本当に?」

僧侶が聞きます。

「あぁ、そうだ。なんでもだ。さぁ、早く言え。私は眠いのだ」

女神はそう言うと大きな欠伸をしました。その時後ろでもじもじしていた勇者が、

「そ、そ、それじゃー。みんな。僕が願いを言って…いい?」

と小さな声で言いました。みんな、驚いた目で勇者を見ます。普段だったら、自分を意見を表すことなく、黙っているのでみんな驚いたのです。

「いいぜ」

戦士が即答します。続いて、魔法士も僧侶もいいと答えました。

「魔王を倒せる剣をください!」

声を張り上げ言います。女神はにやっと笑い指を鳴らしました。

「よかろう。では、次は500年後に」

暗転します。気がつくと、勇者一行は森の中に倒れていました。

「勇者、今のは…!」

「夢じゃなかったね。ほら…」

彼の腰には新たな大剣が刺さっていました。

「さあ、早くみな行こう。魔王を倒しに」

「おう!」「はい」「ん」

その後、彼がどうなったのか分かりません。   けれど魔王を倒せなかったことは確かです。


「終わり…。イレール。着いてきて」

静かに本を閉じる。

「はい!」

「じゃ、また来るね」

母は、手を振りイレールと共に部屋を出ていった。

「うん!」

願いを叶える女神様か。この話って確かに実話だった気がする。

「500年に一度に目覚める女神様…」 

今からだと、約300年後か…。

長くはないか。

「300年後…イレールを連れて、旅に出よう!」

決まるとすぐに羊皮紙を出して、やりたい事を彩っていく。

「あの子は、生きてないよね。…同じ種族だったらよかったのに…」

















僕は人間になりたい




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