斎宮調整池の怪

異端者

プロローグ

 その言葉は、うだるような暑さの中で頭の中にこびりついている。

 斎宮調整池――この単語が、どうしても頭から離れない。

 なぜ、そうなのか? そもそも、その言葉をどこで知ったのか?

 全て定かではない。分かっているのは、私がその単語を知っているということだけだ。

 とりあえず冷蔵庫から麦茶を取り出すと、一気に煽った。少しむせる。

 なんとなくだが調べてみよう。このまま部屋で腐っているよりはマシかもしれない。スマホからインターネット検索すると、その池はすぐに見つかった。

 三重県の、玉城町と明和町にまたがる貯水池らしい。上空から池全体を撮影した物や周辺の風景を撮影した物が載っている。それなりに大きな池らしいが、特に目を引くような印象はない。

 それなのに、なぜ覚えているのだろう――行けば、分かるかもしれない。

 幸いその場所なら、車で少し遠出するぐらいで着く。ちょうど休みだし、ドライブする気で出かけてみるのも悪くない。

 私は車のキーを手にすると外へと向かった。

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