遊郭の噂

UD

元遊郭の噂

 元遊郭のお屋敷には、不思議な噂があります。


「なあなあ。いつまでここにいるんだ?」

「いつまでてそんなんわからへんよ」

「えー? なんで? だってお前の友達、えーっと何っちゃん?」

「よきっちゃん」

「そう、そのよきっちゃんに頼まれたんだよね? 一年前に内見してって」

「そーや。よきっちゃんがな、さきっちゃんの友達のもきっちゃんに頼まれて、よきっちゃんの代わりにな。で、これや」

「もう何っちゃんかわからないけど、まあいいや。んで、いつまで経っても誰も来ないよね?」

「もうすぐ来るんちゃう?」


「お前がそう言い続けてもう一年だよ? さすがに内見ていうレベルをこえてるんじゃない?」

「しゃーないやん。あんたなあ、そういうところが木星人やねん。そういうな、細かいところにな、なんかこだわってな」

「え? そういうのが木星人なの?」

「そーや」


「おい、お前ら」


「せやからな、そんな細かいこと気にせんでええねんて。てかな、今はそれどころじゃないねんて」

「なになに? それどころじゃないって、どしたの?」

「あんな、昨日な」


「おい!」


「なんや、あんたおったんかいな」

「あ、どこ行ってたんだよ、今ね、僕が木星人かどうかをね」


「そんな事はどうでもいい。お前らおかしいとは思わないのか?」


「おかしいよ! だって前は火星人だって言ってたもの。今日になって木星人とか言われてもさ」

「しゃーないやん。さっきのはどう見ても木星人やもん」


「そこじゃない、ちがうんだ。どうして俺達はここから出られないんだと言っているんだ、ただ内見に来ただけなんだぞ! もういい。今日は二階から出口を探してみた」

「もうずっとしてるよね。そして、出口はない」


「せやなあ。まあええんちゃう、こうして毎日楽しくできてるんやし」


 この老朽化した豪邸には妙な噂が広まっています。


 この豪邸から、夜な夜な男女の声が聞こえてくるというのです。時には笑い声、時には叫び声、そして時には怒鳴り声が。


(完)

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