ここにいるよ。

みっちゃん87

前編 見えざる絆

透明な体を持つ青年、メイルは、生まれた瞬間から世界とは異なる形で存在していた。彼の体は完全に透明で、誰の目にも留まることはなかった。病院のベッドに静かに横たわる赤子を、ただひとり、老人が見つけた。老人はメイルが他の誰にも見えないことを理解していたが、彼を育てる決意を固める。


老人の家は、メイルにとって唯一安心できる場所となった。老人はメイルに話しかけ、彼の存在を認識し続けた。メイルは声を出すことができず、また触れることもできないが、老人は彼の気持ちを理解しようと努力した。老人はメイルに人としての尊厳を教え、彼が透明であっても価値のある存在であることを伝えた。


しかし、時は流れ、老人の体は弱っていった。老人はメイルに最後の言葉を残す。「お前はこの世界に必要な存在だ。見えないからといって、価値がないわけではない。お前の心は、誰にも負けない強さを持っている。」老人が亡くなった後、メイルは完全に孤独になった。老人の存在が彼にとってどれほど大きなものであったか、その喪失感は計り知れない。


老人の死後、メイルは自分の存在をどのように受け入れ、この世界で生きていくべきかを模索する。彼は時に悪戯をし、その存在を周囲に知らしめようとするが、それはいつも虚しさを増すだけだった。しかし、老人の言葉は彼の心の中で響き続けている。メイルは自分がこの世界に居場所を見つけることができるのか、そして自分の存在をどのように価値あるものとして示すことができるのか、その答えを探し始める。

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