第150話 山崎の合戦

「かかれ!」

 

 立花宗茂隊が攻めかかる。

 それに対して伊達方、水野勝成が対応する。

 

「西国無双が相手でも、この鬼日向はそう簡単には止められぬぞ!」

 

 両者の勢い凄まじく、一進一退の攻防を繰り広げる。

 しかし。

 

「……そろそろ頃合いか……」

 

 水野勝成は後方を気にしつつ、指揮をする。

 

「引くぞ!」

 

 水野勢は少しずつ兵を引いていく。

 その行動に宗茂は不信感を抱く。

 

「……殿。如何がなさいますか?」

「……追うぞ」

 

 宗茂は天王山を見つつ言う。

 

「我らが前進すれば後続の軍が山崎に入る。さすれば、天王山を二方面から攻められる。我等は敵本隊を相手にしつつ、後続の軍に天王山を攻め落としてもらおう」

「はっ! たとえこれが罠でも我等は負けませぬ!」

 

 立花勢の士気は高い。

 前哨戦で活躍できなかった分、気合が入っていたのだった。

 

「突っ込め!」

 

 立花宗茂の号令で立花勢は一斉に仕掛ける。

 すると、敵は抗戦せずに後退していく。

 

「やはり誘ってるか……」

「如何なさいますか?」

 

 宗茂は少し考えてから口を開く。

 

「構わん。攻め続ける」

「はっ!」

 

 そして、隘路を抜け、平野部が広がる。

 すると、そこには石田、大谷、水野勢が広く布陣していた。

 立花勢は囲まれた。

 

「くっ! 不利か……されど!」 

「かかれ! 一気に押し潰せ!」

 

 立花勢の足が止まる。

 後方には島津勢が押し寄せてきており、立花勢は引くに退けなかった。

 

「西国無双の力を見せてやろう! かかれ!」

 

 立花宗茂が自ら先頭に立ち、槍を振るう。

 その様子を見た立花兵も宗茂に続いた。

 立花勢は劣勢をもろともせず、敵兵をなぎ倒していく。

 

「な……これが西国無双か!」

「大谷殿! この水野勝成が西国無双を押さえまする! その隙に雑兵を倒してくだされ!」

 

 水野勝成が西国無双、立花宗茂の前に立つ。

 

「……少し舐めておった。まさかここまで不利に立たされるとはな……」

「この鬼日向がいる限り、そう簡単には負けはせぬ。立花宗茂殿。お手合わせ願おう」

 

 互いに武器を構える。

 雑兵達は二人の一騎討ちに手は出さなかった。

 しかし。

 

「かかれ!」

 

 横槍を入れる者達が現れる。

 

「何事だ!?」

「ちっ! 邪魔をしやがって! 一体誰だ!」

 

 水野勝成と立花宗茂も異変を察知する。

 

「水野様! 後方より敵勢が!」

「何だと!? 一体誰の部隊だ!?」

 

 水野勝成の元に伝令が駆け寄る。

 

「は! 加藤清正、鍋島直茂、龍造寺ら、大阪にて取り逃がした者等にございまする! その数二万!」

 

 天王山に陣取るは三万。

 水野勝成ら本隊が率いるのは四万程。

 対して立花宗茂が率いるのは三万。

 しかし伊達方の背後に突如として二万の敵が現れた。

 

「くっ! 耐えよ! 天王山の南部殿達が撤退するまで時間を稼ぐぞ!」

 

 伊達方は完全に退路を断たれたわけでは無かった。

 しかし、ここで石田勢ら後退すれば天王山の南部勢が取り残される。

 引くわけには行かなかった。

 

「水野殿……決着は、大阪にてつけましょうぞ」

「……相分かった」

 

 水野勝成はその場を後にする。

 山崎の合戦は双方大きな被害が無いまま、終結した。

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