第22話 東国無双と西国無双
「来るか、西国無双、立花宗茂!。」
「家康の前に立ちはだかるは東国無双、本多忠勝!相手にとって不足は無い!かかれ!」
島津義弘に続き、西国無双、立花宗茂も兵を進めた。
が、家康本陣の眼の前には東国無双、本多忠勝が待ち受けていた。
「兵の数では我らが勝っておる!臆するな!」
「三河武士の底力を見せよ!続け!」
寡兵でもって徳川家康の本陣を守る本多忠勝は自ら槍を振るい、立花宗茂を押し止める。
対する立花宗茂も負けじと刀を振るう。
「本多忠勝!覚悟!」
「っ!」
乱戦の中、本多忠勝と立花宗茂が直接刃を交える。
「ぐっ!中々!」
「そちらこそ!」
立花宗茂が幾度となく仕掛ける。
「はぁっ!」
立花宗茂の雷切が忠勝を襲う。
が、忠勝の蜻蛉切がそれをいなす。
「なんの!」
かの豊臣秀吉に東の本多忠勝、西の立花宗茂と言わせた二人の名将は最初の数回の打ち合いで互いの力量を理解した。
互いに無理に打ち合えば無事では済まぬという事も。
「……。」
「……。」
睨み合いはしばらく続いた。
が、互いに譲らず、決着はつきそうになかった。
その一騎打ちは凄まじく、打ち合っていない時がしばらく続いていても、周りの兵は思わず戦の手を止めたと言う。
「……このままでは埒があかぬ。本多殿。兵の数ではこちらが上。ここは引かれよ。乱戦になり、雑兵に取り囲まれて討ち死には本望では無かろう。」
「……。」
その立花宗茂の提案に忠勝は答えない。
が、全く聞く耳を持たない訳でもないと立花宗茂は感じた。
「家康殿の本陣で、対等な状況で決着をつけぬか。互いに同じ兵力で、疲労を残しておらぬ状況で、悔いの残らぬ一騎打ちがしたい。そなた等の背後を襲うことは決して無い。立花の名にかけて誓おう。」
「……相分かった。」
忠勝は立花勢の雑兵を相手取り、多少ではあるが疲弊していた。
対して立花宗茂も急ぎ家康本陣を襲おうと馬を走らせていたので、同じく疲弊していた。
互いに武人として決着をつけたいという思いが合わさり、忠勝はそれを受け入れた。
「……では、後程。」
忠勝は立花宗茂に一礼するとすぐさま家康本陣へかけていった。
「殿、宜しかったのですか?」
「うむ、本多殿は幾度の戦に出て傷一つ負うた事が無いと聞く。しかし、これだけの兵に囲まれれば、そのような猛者でさえ容易く死ぬであろう。」
かの剣豪将軍足利義輝も雑兵に囲まれ討ち取られたという。
そして、不死身の鬼美濃と恐れられた馬場信春も長篠で銃弾に倒れた。
あの名将をそのような結末にさせたくないと立花宗茂はそう思った。
「我等もしばしここで待とう。周囲の動きに気を付けよ。」
「はっ!」
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