第33話 新住居

「どういうことですか?」


「どういうことも何もそのままの意味よ。ここに居たって意味が無いでしょう。それに国からの依頼もあるのよ?まともに学校なんか行けやしないわ」


 そう言われてもねぇ...。とはいえ師匠がこうやって言ってるということは、多分もう決まってしまったことなのだろう。正直この学校に思いれ自体はない。男尊女卑がひどいし。


 とすれば、考えることは一つ。


「家を買おう」


 俺たちが今冒険者学校を出るにあたって一番困るのが、住居問題だ。俺たちは現在学校の寮に住んでいる。学校を卒業するとなれば、この寮を出て生活しなければならない。すると、必然的に住居が必要となってくる。


「どうせ師匠は考えてるんでしょ?」


「住居を斡旋してくれる業者とはすでに話を付けてるわ」


 ほらやっぱり。どうせ纏まったお金が入ってくるんだし、家を買ってしまおう。


「あ、ちなみに住むなら首都アンベルクでお願いね」


 依頼を受けやすいからだろうか。何はともあれ、今日は遅い。だんだん日も暮れてきている。

 学食で晩御飯を食べ、大浴場に入り、寮に帰った。特に大浴場では俺たちが卒業することが知れ渡ってたらしく、先輩たちの寂しがる様子が見れた。それにしても、もうできなくなってしまうと考えると、些細なことでさえ大切に感じるな。


 ふぅ……。俺はベットに寝転がり、一息ついた。今日はアンベルクでいろんなギルドを回った後に、師匠と模擬戦か……。あれ?今日働き過ぎじゃね?どおりで大浴場のお湯が身に染みたわけだ。


 それにしても、新しく買う家はどんなものがいいだろうか。お風呂はついてるとありがたいな。他にも……。


 ――――――――


 鳥のさえずりと朝日によって目が覚めた。新しい家のことを考えてたらいつの間にか寝てしまってしたらしい。


「んんっ……」


 ベットから降りて、伸びをし、軽く顔を洗い目を覚ます。そのあとに身だしなみを整え、気合を入れる。今日も一日頑張りますか。これは、前世の社畜時代からのルーティーンだ。


 自室を出て、今日の待ち合わせ場所である、学校の正門に向かった。俺が付いたころには既に集まっていた。


「遅いよ~、カルラ」


「ごめんね、ちょっと寝坊しちゃったかな?」


「それじゃあ、行きましょうか」


 そう言って師匠は詠唱を始めた。


「『テレポート』」


 俺たちは師匠の『テレポート』に乗って、アンベルクへと向かった。


 師匠に案内され約数分、俺たちは不動産屋に来ていた。


「ここが私の用意した業者、『アンベルク不動産』よ」


 なんとも安直な名前。聞くと、不動産界隈の老舗らしい。しかも会員制なんだとか。なのに取り揃えてる物件がいいのもあって、家を買うならこの店と言われるほど有名らしい。


 店に入ってみると、そこの職員はおじいさん一人のみだった。


「この人はモーリス。この店の店主よ」


 師匠に紹介されたモーリスさんは一礼をした。


「オリヴィア様、本日はどのような別件をお探しで?」


「この子達の新居を探したくてね。何かいい物件はあるかしら」


「3人で一緒に住むとのことでしたら、一戸建ての方がよろしいですよね。それでしたら…こちらの物件とかどうでしょうか」


 そう言い、モーリスさんは店の奥にある棚から書類を何個か出してきた。その書類には土地の面積、建物の概要、住所など住居に関する情報が多く書かれていた。


 う~ん、文字で見ても正直よくわからんな……。イメージが湧きづらい。


「書類で見てもわかりにくいわね……。実際に見に行きましょうか」


 師匠も分からなかったらしい。俺たちはその書類をもって家の内見をすることとなった。


 モーリスさんに連れられて俺たちは最初に家に向かった。


 最初の家はアンベルク城の近くの家だった。ただ、その家は大きかった。聞くと、もともとここら辺は貴族の住居だったらしく、大規模な家が多いらしい。今でも貴族の末裔が住んでたりするのだとか。ここは、つい数年前にその元貴族が全員亡くなってしまったようで、空き家になっているらしい。


 三人で住むには家が大きすぎる。元貴族の家なだけあって設備はすごく充実してるんだけどなぁ……。さすがに家が大きすぎる。


 次に連れてこられた家は、商業ギルドの近くだった。ここは設備もよく、商業ギルドが近くにあるので、周囲は商業が発展していた。ただ、商業ギルドに近いというのが問題だった。師匠に聞いてみると、近くにギルドがあると癒着してるといわれるかもしれない、とのこと。


 残念だけどこの家も断念することにした。


 三件目は門の近くだった。この都市に入ってすぐの場所で、三人で住むにはちょうどいいほどの大きさをしていた。家のすぐ近くでは毎日市場が開かれており、賑わっている。また、アンベルク城につながる大通りに面しているため、すぐに城に行けるのもいい点だ。


 設備も充実していて、大きめのお風呂もある。このお風呂なら三人で一緒に入っても……って何考えてんだ俺は!いや、うんまあ今更か。多分一緒に入ることになるしな。


「結構いいんじゃない?」


 二人に確認してみると、ここを買うのに賛成の意見だった。よし、じゃあここで新居は決まりだ!この物件の価格は白金貨25枚らしい。やっぱり大通りに面しているから価格も高くなっているのだろう。後日、一括払いをする契約をし、俺たちはこの家を手に入れた。


 実際に入居できるのはお金を払ってからだが、数日後には白金貨千枚ぐらい入る予定だし……。多分問題ないでしょ!


 こうして、俺たちの新しい住居は決まった。

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