幕間•誰が紳人を元気にするのか
「いただきま〜す!」
「いただきますじゃ!」
アマ様の社天岩戸にて、わしらは穏やかなお昼ご飯を食べる…はずじゃった。
「!」
「んむ?んくんく…、っ。どうしたのじゃ」
わしの隣で穏やかな笑顔を浮かべていた紳人が、ズズ…と一口味噌汁を啜った途端目を見開いてガチン!と固まってしもうた。
どうしたのかのう?此奴は、自分以外の者が作った料理に口煩いことを言うようなやつではないのじゃが。
「----」
トン…ドサッ。
「「し、紳人!?」」
落とすような挙動で茶碗をちゃぶ台へと置いた紳人。その瞬間、安らかな笑顔でわしの膝へと倒れ込んでくる。
わしもウカミも予想しておらんかった事態に、思わずその顔を慌てて覗き込む。
「死ーン…」
「死んどる!?」
「何とか生きてはいるみたいです。良かった…紳人が臨死体験に慣れてたから、持ち堪えたのかもしれません」
「それはそれで可哀想じゃと思うのは、妾だけかや…?」
顔を真っ青にしてプルプル痙攣してはおるが、呼吸はしっかりとしておる…ひとまずは安心じゃ。
「あわわ…紳人さん、大丈夫です?」
「クネツ。お主が紳人のご飯を作ったんじゃったな。何を入れおった!」
ならば次に確認すべきことはと、紳人を抱き締めながらクネツを見据えればぎゅっと尻尾を抱きしめながら思い返すようにポソポソと話し始める。
「何って…変なものは入れてないです!ただ」
「ただ?」
「体に良いものとネギとプリンを混ぜたものをお味噌汁に」
「絶対それじゃろうが!?」
紳人が風邪を引いた時、わしの提案を遠慮してくれて良かったのじゃ。
あんな弱った状態で食べてたら本当に黄泉へと旅立っておったかもしれん…。
「紳人さんが起きたら、ちゃんとしたご飯を食べさせてあげましょうね。私が用意しておきます」
「うむ…すまぬがコトよ、よろしく頼むぞ」
「お任せください!」
微苦笑を溢しながらも頼もしく頷いたコトが、再び台所へと姿を消した。
「あうぅ…クネツ、ダメダメですぅ…」
「まぁまぁ、元気出してくださいクネツ。誰にでも失敗はありますよ。紳人もきっと、戻ってきたら許してくれます」
「本当です…?」
「うむ。それは、間違い無いのじゃ。わざとではなく此奴のことを思ってしてくれたことであるならば、わしも大目に見てやる」
「あ、ありがとうです〜!」
ガックリと項垂れるクネツの肩をそっとウカミが支えてやり、励ましの言葉を告げた。
その言葉に反応して恐る恐るわしの方を見るクネツに、大きく頷きを返す。
正直に言えばわしの愛しい紳人によくも!と思わずにはいられぬが、紳人も無事じゃし何より健康を気遣ってくれたその優しさを否定したくはない。
今回だけは許してやろう…特別に、な?
それに、許してやった時の瞳を潤ませて両手を合わせる様には何だか毒気を抜かれてしまうからの。怒るに怒れんのじゃ。
「う、んん…」
「っ!紳人、気が付いたか」
「あれ…コン。俺、確か味噌汁を飲んで」
「うむ、倒れてしまったのじゃよ。今元気をやるからの」
「え?いきなり何をんむっ…!?」
目を覚ました紳人の両頬をわしの手で包み、そっと唇を重ねる。
その熱と感触につい思いが溢れてしまいちうちうと数回吸い付いてから、ちゅぽんと小さく音を立てて離した。
「元気、出たかの?♡」
「いきなりトップギアだよ、コン…」
顔を真っ赤にして口元を隠す紳人。その頰は…へにゃりと可愛らしく緩んでおった。
因みに、ウカミたちにも当然見られていたのじゃが。
わしの紳人じゃということを改めてアピール出来て、恥ずかしいというより寧ろ誇らしい気分じゃのう♪
わらわらと詰め寄って来るウカミにクネツ、アマ様の三神を尻尾であしらいながら恥じらい起き上がれぬ紳人の胸に堂々と飛びつくわしなのであった。
紳人だけは、誰であろうと譲らぬぞ♡
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