第5話 駄菓子屋は300円まで!

僕らは駄菓子屋についた。

「お邪魔しまーす。」

孝太郎がこっそり駄菓子屋に入っていった。

僕もそれに続く。

「何してるの?あんた達。」

店の中には、華奈がいた。タイミング悪いな。

華奈は真面目な性格なのでチクられたらめんどくさい。

「300!」

孝太郎が指を三本立てて言った。300円の駄菓子で手を打とうという意味だ。

「…わかったわ。」

華奈はお菓子に目がない。ふふ、ナイスだ孝太郎!

「今月のお小遣いが…。」

半泣きでこうたろうが言った。

「よし、華奈はお菓子を選んでもらうとして、おばちゃん、監視カメラ見せてくれない?」

「カメラ?なんでそんなもの見る必要があるのよ?」

華奈がお菓子を選びながら言ってきた。

「例のひったくり犯、写ってるだろ。」

「あんたらまた探偵ごっこしてるの?もう警察の人に見せたわよ。警察の人に任せておきなさいって。」

「いいだろ。俺は将来探偵になるんだ!」

華奈とこうたろうが言い合っていると

「まあまあ、華奈。ちょっとぐらいいじゃないか。ほれ、これが見たいのかい?」

そう言っておばちゃんが映像を見せてくれた。

「ありがと、おばちゃん!」

孝太郎が飛んできた。

「ちょっとおばあちゃんあますぎ。」

そう言いながらお菓子を選ぶ手は止めない。

まあ、とにかく情報が得られそうだ。


カメラに写っていたのは、小太りでフードをかぶった上下黒ジャージの男が校門に走ってはいるところだった。よく見ると、黒マスクにサングラス手袋もはめている。ネットの情報は、本当だったようだ。

僕らがカメラに夢中になっている時、駄菓子屋の扉が開いた。入ってきたのは、眼鏡、マスクをつけ白衣に黒手袋をした人物。どこかで見覚えが…。

「こんにちは。ん?お前たち、森に神川じゃないか。」

「「羽田先生!?」」

僕らは同時に叫んだ。

「こら、家に居ないとダメだろ。まだひったくり犯捕まってないんだから。」

「「は〜い。すみません。」」

僕らは素直に謝った。先生は華奈のことは怒らない。あいつの家はここだって知っているらしい。常連なのかな?

「まあ、今回は許してやる。ほかの先生だったらやばかったぞ。親には言ってるのか?」

「「…。」」

脱出してきた、なんて言えない。

「まあいい、帰りは私が家まで送ってやる。ところで、何してたんだ?」

「こいつら、ひったくり事件の調査してるんですよ。」

なっ!あいつ裏切りやがった。しかも、僕らが怒られてる隙にお菓子も買い終わったらしい。

孝太郎も許さぬという顔で華奈を睨んだ。

華奈は孝太郎にあっかんべー。

「そんなことしてたのか?ダメだろ、危険なんだから。」

「いや、大丈夫です!僕の夢は探偵なので!もちろん無理はしてませんし危険なことは助手のカオルンくんが止めてくれるので。」

孝太郎が必死で弁解する。

ってか、いつの間にか助手にされてません?本人はワトソンくんをもじったのだろうけど、語感がまるで違うぞ。

「先生も駄菓子屋よく来るんですか?」

話題を変えてやる。

「ああ、パチンコの端数景品で駄菓子を貰っていたらすっかりハマってしまってね。ってこんな話生徒にするものじゃないな。」

先生、パチンコとか行くのか。

「というか、先生も帰りが早いんですね。」

「ああ、そんなんだよ。校内を調べるから校長先生と教頭先生以外は早めに返されたんだよ。」

なるほど。学校で犯人はすぐに見つからなかったわけだ。よし、ちょっと情報を聞き出してみるか。

「学校の監視カメラとかに犯人写ってなかったんですか?」

「それが、昨日から今日にかけて監視カメラの点検をしてたんだよ。」

なんてタイミングの悪い。

「じゃあ、この人に見覚えないですか?」

僕は監視カメラに写った人を見せる。

先生は、理科の先生だ。理科室は学校に入ってすぐのところにある。校舎に入ったなら目撃しててもおかしくない。

「どれどれ?うーん。警察の人にも聞かれたな。僕は理科室にいたけど、見覚えはないかな。背格好は田中先生に似ているけれど。」

「「!?」」

僕らは目を見合わせる。これだ!先生が犯人だなんて警察の人も考えないだろう。だから警察は見つけられなかったんだ!

「ん、なんだ?田中先生に疑ってるのか?あの先生は、事件当時職員室にいたらしいからありえないぞ。」

「そうなのか…。」

孝太郎がしょんぼりする。

『いや、調べればもしかしたらアリバイ工作をしてるかもしれないぞ。』

僕が小声でつぶやく。

『なるほど。じゃあ、明日から調べるか!』

孝太郎が元気に戻った。

「おいおい、もうこんなことやめろよ。危険なんだから、生徒に何かあったら、先生は心配なんだよ。」

心配してくれる羽田先生には申し訳ないが、こうなった孝太郎は止められない。

「やばいそろそろ帰らないとバレるぞ!」

僕らが家を出て一時間ほどたった。そろそろ帰らないとバレたら親が鬼と化すだろう。

「よしじゃあ家まで送ってやろう。」

先生が言うが、先生に来られると親に内緒で来ている身としてはちょっと困る。

「いや、大丈夫です!おばちゃんありがと!」

「気をつけて帰んなさいね。」

そう言い残して、僕と孝太郎は先生の脇をぬけ、駄菓子屋を飛び出そうとした。

ん?今何かに気がついた気がする。ん〜、わからん。思い出したらでいいや、今は急ごう!


しかし、帰った僕らを待っていたのは、道の真ん中で仁王立ちをした赤鬼と青鬼(孝太郎と僕の母)であった…。

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