探偵ごっこも役に立つ!

手辺溶液

第1話 本の中から自己紹介!

「犯人はこの中にいます!」

僕は力強く言った。

ここは雪山の山荘。僕の他には5人、吹雪のためここに閉じ込められたのだ。

そして、そのうちの一人が昨日の朝、殺されたのだ。

「そして、その犯人とは──」

僕が勢いよく指を振り下ろそうとしたその瞬間。

『キーンコーンカーンコーン』

チャイムが鳴った??

どうゆうことだ?今、僕は雪山の山荘にいる。なのになんで学校のチャイムがきこえてくるんだ?

僕は必至で思考を巡らせる。

『─わくん!神川くん!』

ん?誰だ?女の子の声がする。

その瞬間、僕の視界は暗転。気づくとそこは教室だった。何故かクラスメイト全員が立っている。

「ほら、挨拶するよ。立って!」

隣の席からそう言われて僕は反射的に椅子から立った。

わかった、今は朝の挨拶をしているんだ。

机を見ると本が1冊。またか。僕は、この本に夢中になって学校にいることすら忘れていたようだ。

「気をつけ。礼。」

何も考えなくても体が反応して、礼をする。

「おはようございます。」

「おはよーございます。」

生徒らがゆっくり返す。ちなみに僕は口パク。

「それでは連絡をします。」

だんだん意識が戻って来たから先生の意味の無い話のうちに状況を確認しよう。

僕の名前は神川馨。趣味は読書、休み時間も自分の席を本を読んでいる。

あと、少し変わった能力、というか悩みがある。それは、今日の朝のように本を読んでいる時、本の中に入り込んでしまうのだ。周りから見るとただ本を読んでいるだけのように見えるが、僕の中では本の中の人物になりきり、だいたい読み終わるまで戻らない。そして、これはとても困る。今回のようなことになるからだ。気をつけてはいるけど、いつも友達に起こして貰っている。

「最後にこの辺りでひったくりがあったらしい。犯人はまだつかまっていないらしいから登下校時は集団で気をつけて下さい。これで先生の話を終わります。1時間目の用意してー。」

っと、先生の話が終わった。ここらで先生の紹介もしておこう。この眼鏡をかけた僕らの担任が、羽田先生。とても綺麗好きで、毎日全身白ずくめコーデの先生だ。白がいちばん何にも染まっていない綺麗な色だとしょっちゅう言っている。

そういえば、起こしてくれたことにお礼を言ってなかった。

「ありがとね。起こしてくれて。」

「もう、そろそろ自分で起きれるようになりなさいよ。」

僕の隣の席の女の子、名前は瀬川 華奈。僕とは幼稚園からの幼なじみだ。

「おい!今の挨拶口パクだったろ!」

そう言って肩を叩いて来たのは、森 孝太郎だ。こいつも幼稚園からの幼なじみ。

「…なんで分かるんだよ。」

「観察力は探偵になるためにめっちゃ重要な能力だからな!」

そう、そして孝太郎は探偵をめざしている。僕もミステリが好きだったので仲良くなったのだ。

「それより、ひったくり事件の調査しようぜ!」

という感じでいつもこいつの探偵ごっこに付き合わされる。僕も僕で予定はないので(友達もいないし…)ついて行っている。

「調査なんかどうやってするんだよ。」

「そりゃ、ネットとか、新聞とか。そうだ!直接警察行きゃいいんじゃないか!?」

「それはダメだろ。」

間髪入れずにツッコミを入れる。とこんな話をしていたら先生が入ってきた。国語の今川先生だ。

「まあ、とにかく放課後うち来いよ!」

「わかった。」

この時は軽い気持ちだったが、後々僕たちはこの事件に巻き込まれることをまだ知らなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る