カラフルに

森井スズヤ

第1話



光沢眩しく磨かれた綺麗なお墓を見て、「ああ、早く死んでみたいな」と思った。黒、灰…何とも言えない濃くも薄くもない色の石たちのその下には、骨だけとなった故人が安らかに眠っている。そのひとつに私はなってみたいと、不思議に考えた。


死んだらどうなるんだろう。そんなありふれたことを、小さな時から何度も何度も考えた。勿論答えなど出ないし、出たとしても、きっとつまらない机上の空論だろう。だから“死”は“面白い”んだと私は思うが、言葉に不謹慎さが垣間見えるのは気のせいだろうか。


私の家の近くにはお墓がある。少し離れた場所には曽祖父と曽祖母が眠っている。車で遠く移動した場所にもお墓がある。この地域にはきっと、知らないだけでもっと沢山のお墓があるはず。


不思議。こんなにも沢山お墓を作って、沢山の人が悲しんで、それでも尚日常は続いていって、いつか私も即座に死に至る。

私はどこのお墓に入るんだろう。そもそも骨だけになれるのかな。事故でめちゃくちゃになって残骸だけに成ってしまったり、獣に骨までしゃぶられ噛み砕かれ無くなってしまったり、溶けて燃えて凍って、跡形もなく黙々と消えてしまうかも。骨だけになって亡くなることのできる人は、もしかしたら幸せな余生を送った人の特権なのかもしれない。


「でも、やっぱり死にたくはないな」


今日も悠々とベッドで眠っている私の、太った体の奥底に、もう骨なんてないのかもしれない。


そう思った瞬間、あの昼下がりに見かけたモノクロのお墓たちが、急にカラフルに見えて嫌になった。

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カラフルに 森井スズヤ @suzuya__113

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