ケミストリー・オブ・ミュージック
浅貴るお
第1話 ハルミチ
僕は、物心付いた頃から、音楽家の両親から、楽器演奏の手解きを受けていた。
ピアノから始まり、ギター、ベース、シンセサイザーなどの楽器だ。
どの楽器も及第点以上に演奏することが出来た。
しかし、僕の歌声だけは及第点に達する事が出来なかった。
声帯だけは、上手くコントロールができずにいた。
演奏は最高なのだが、歌唱力は並み以下。のレッテルを貼られた。
僕は、演奏家としては、とても自信を持っていたが、ヴォーカルとしては、壊滅的に駄目だった。
僕が成りたかったのは、ヴォーカルだった。
なのに、演奏は神童と呼ばれるほどの実力を兼ね備えていたが、歌は一向に上手くなることはなかった。
歌唱は駄目なら、演奏で挽回すればいと父は言ったが、僕がなりたいのはヴォーカリストであって、演奏家ではない。なのに、僕は父に反抗出来ず、父の進めで、都内にある一流の音大・栄音楽大学に演奏科で入学する事なるのだった。
演奏は好きではあったが、歌唱はもっと好きだった。たが、好きだけではどうにも出来ない歌唱力の壁が大きくはだかっていた。
自分の声帯の限界を感じながら一年間授業をうけた。
そこでは、ヴォーカルの練習メインではなく、演奏メインの練習で進級することになる。
ハルミチ19才の春。
もやもやを抱えながらの進級。
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