第2話 自動車教習の路上教習中に運転していた車が〇〇〇〇れた話
二十歳を過ぎた頃。自動車の運転免許をとる為に教習所へ通い始めた。
合宿という訳でもなく学校に直接通う形で仕事をしながらということもあり取るのには大分時間がかかってしまった。
費用もマニュアル免許で三十万近くしたと想う。
とはいえ、仮免許の試験は筆記も実写も問題なく一発合格で取る事ができた。
それまでは校内の施設内に造られた教習用の道路を使っての実車教習だったが、
ここから仮免を取ってからは校外を出ての実車教習る。
今までの校内教習とは違い実際に車が走っている道路を走る訳で、緊張感もグッとあがる。
そこから何日経ったくらいだろうか。
その日も隣に教官を乗せて車を校外から外の一般道に向かわせた。。
暫く走った後、少し広めの二車線道路に差し掛かった。
するとバックミラー越しに、後ろの車が右車線に移動したのが目に入った。恐らくそのまま追い越しをする予定なのだろう。
当然こちらは教習車。それほどスピードは出していない。車間には気を付けながら追い越していくのをそのままやり過ごせば問題はないはずだった。が……。
何と追い越した車は右車線に移った直後に左車線に戻ろうとしてきたのだ。
そして、あちらの車の側面がこちらの教習者のバンパーの右端にぶつかった。事故を起こされたのだ。
教習中の教習車に、だ。
別に強くぶつけられた訳ではないので怪我をするような事故ではないが立派な事故だ。
しかも、そのぶつけた相手は驚きの行動に出る。何とスピードを出してそのまま走り出したのだ。
すかさず横の教官が小さく叫んだ。
「逃げた! 追っかけて」
心の中では(ええ! こっちは教習中なんすけど)と想いながらも仕方がない。アクセルを踏んでスピードをあげる。
そこからは、振り切ろうとするあちらの車を逃すまいと追い上げていき、獅子奮迅、七転八倒の大スペクタクルカーチェイスに発展……したなんてことは当然無く。
少し追いかけると相手は観念したのか路肩に停めた。こちらもその後ろに停車する。
教官は私に車中で待っているように言い残すとあちらの車の主と話を始めて、結果警察が呼ばれた。
事故の検証などが済むまでには小一時間以上が経過。
まだ日が落ちる前だったのに終わる頃にはとっぷりと日が暮れている。その間何をすることも出来ない私はただただ運転席に座って時が過ぎるのをまつだけ。
そして漸く戻って来た教官が言った言葉に衝撃をうけた。
「ごめんね。またせて。あ、後、申し訳ないけどこのコマの教習分は無しね」
ガーン。
折角仕事の合間に予約をする為に造った時間がパア。いや、本来教習を受けるはずの時間も大きく超えてまさしく時間を無駄にした形となった。
その後苦労をしながらも何とか無事免許を取る事は出来たのだが。
あの時の経験を思い出すと何とも言えない気分になる。
まあ、「あの車をおっかけて」なんてセリフは映画やドラマじゃなきゃいわれないだろうからその意味では貴重な経験だったのかな。
因みにそれだけ苦労して取った運転免許証は殆ど使われることなく、三十万円の身分証明書として大変重宝しております。
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