第20話 悪役令嬢テンプレハンターD

 私の名前は、フランソワ・ボルケーノ。このスートンズ国を救った英雄、ザンコック・ボルケーノ将軍の一人娘。お母様は隣のラウモウンズ公国の王女よ。

 で、私、スートンズ国王子ヒヨツコとは幼馴染なのよ。

 ていうわけで、だれもが、私と王子の婚約を信じて疑わないわ。


 でも。


 知ってるの。私、本当は生まれ変わりだって。

 私、前世は「ニホン」という国で「チャイナ」という国が開発した乙女ゲームやってたの。

 「乙女水滸伝」ていうのね、それ。

 略して「乙伝おつでん」。その「乙伝」そっくりなんですもの、この世界。


 で、「乙伝」ではフランソワは、庶民の娘プリティ・プリティになんだかんだで負けて、ヒヨツコ王子を取られ(略)


 私は権力振り回してプリティに妨害の限りを(略)


 ちょっと、私を断罪って(略)


 よくも(略)


 ふん、おあいにくさま(略)


 お兄様まで! なによ、あんな女に騙されて! 

 はあ? デュラハン召喚?

 ふん、負けないわ。こっちはバハムート召喚よ! 王都を焼き尽くすわ!



 ◇ ◇ ◇



 ふう、とりえず助かったわ。あーあ、城壁の外に出ちゃった。

 城壁の外は最下層の民が住む貧民街。どうしようかしら。










「どうもしない。悲惨な運命が待っているだけ」


 あなた誰?


「悪役は速やかに退場だ」


 なんで?


「何もかも忘れよ。そして立ち去れ」


 ふへ?


 ……。


 …………。

 

 ………………。


 あれ……。

 私、誰だったかしら?

 なんでこんなところに?

 あ、あっちに城壁が。


 ……いいなあ、いつか、城壁の内側に行ってみたいなあ。


「おーい、行くぞ、マチルダ」

 なんか老人が呼んでる。マチルダって私のこと?

「新しいご奉公先はまだ先だべさ」

 そっか、私、年季奉公に出されるんだ。口減らしに。

 

 ……うち、貧しい辺境の農家だもんね。






 その後、フランソワの姿を見たものはいない。

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