第9話 これからの作戦は
この馬鹿げたルールの呪縛に囚われた世界。そこからの脱出、及び世界の破壊を最終目標に設定した俺たちは、早速これからについて話し合うことにした。
「ね、これからどうするよ」
「それを話し合いたいんだ。来翔、僕の家に来ないかい?」
「斑鳩の家に、行く……?」
「ああ、そうさ。この世界は謎が多すぎる……街の人々が近くに居ると安心して話せないし」
「たしかにな」
俺は首をすくめながら少しばかり目を動かして辺りを見渡した。様々な年代の人々が行き交う大通り、笑顔の少ない世界。何がなんだかわからない世界に『慣れて』しまったから、何がなんだかわからないまま生きているという感じの匂いがする。
「じゃ、そうと決まれば早めに動いておくことに越したことはないな。来翔、ついてこい」
「わかった、斑鳩」
「久遠でいい」
「じゃ、久遠」
目配せをして笑い合う。そして俺は斑鳩久遠について歩き出した。
*
「狭くてごめんね。上がっちゃって」
お世辞にも広いとは言えないリビングに通された俺は、久遠に促されるまま床に腰を下ろす。クリーム色のカーテンに、飾り気のないキッチン。新築感ハンパない部屋に、高校生の年頃の二人。
「んで、世界をぶっ壊すって話だけどさ」
久遠が麦茶を運んできながら、話を振ってきた。
「僕のプランとしては、まず町の……この世界の中枢部を調査することから始めようと思うんだ」
「世界の、中枢部? なにそれ」
「え、知らない? 本当がどうかわからないけど、この世界を運営していく中心となる建物……っていうかエリアが、【
なんだそれは。俺は思わず目を見開く。すると、久遠は口元に笑みを浮かべながら聞いてきた。
「さては来翔。知らなかったな?」
「うん。【暁の層楼】ってのは知ってるけど、その……世界の中枢が、機関として、組織として? わかんないけど、そういうふうに存在してるってのは、初耳」
「そうなんだね」
【暁の層楼】――先程のクイズ会場【日時計の鐘】から、真東に進んだところにある高い塔である。街のシンボル……とは言い難いが、まあ元の世界で言う東京タワーやスカイツリーのような、そんな塔。そのあたりに、目ぼしい建物は見当たらなかったと思うけど……。
「久遠。つまりそこに潜入……っていうか、その辺りを探せば〈幽冥の聖騎士〉についての情報も分かるかもしれないってことか?」
「うん。その成果は期待できる」
久遠が頷いた。
「僕も正直、用もないのに町をうろつくことなんてしないからさ、実際に何度も行ったとかではないんだけど」
「そうなのか。んでも、調べてみる価値はありそうだね」
「そ、てなわけで来翔。まずは明日、【暁の層楼】の調査に行かないか?」
俺に、断る理由なんてなかった。
「もちろん、一緒に行くよ」
この世界をぶっ壊すには――この世界を理解しなければ。そのための偵察であり、観察であり、調査だ。
久遠が言った。
「じゃ、明日に向けて少し打ち合わせといくか」
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