第24話:そして決断
「—という事です。出発するなら明日の夜明けがいいでしょう」
ガガギズさんに教えてもらった情報を全てガゼロさんに伝えた。作戦室に集まったメンバーは班長クラスから今回の遠征に参加してる魔道騎士と大魔道騎士だ。室内は重苦しい空気で満たされていた。
「当初の予定なら、まず収容所から子供達を救出してから王都を制圧する手筈だったんだが…」
「タイムリミットが明後日の夜ならギリギリの戦いになりそうだ」
大隊長補佐のコンゴウさんが言った。彼は地図を広げ指を指した。
「俺らがいる古城がここだ、そして王都がここ。途中山があるからそこを迂回して行くと… 丸一日はかかるな」
「それに王都へついてからも問題があります」
ペルナドくんが言った。
「4大天は強力です、彼らは数少ない魔術を用いて戦ってきますので魔道騎士の方が対処しなければなりません。厄介なのは、彼らは神級魔法を使います」
魔術は基本初級、中級、高級、弩級に分けられる。神級はそれよりも上で、その上に天体級が存在する。魔道院で習うのは初級から高級、場合によっては弩級までで、それより上の階級は禁忌とされた。
「大魔道士の俺でも無理か?」
「相手によります… 」
「ここにいる大魔道騎士は俺とそこで寝てるドアホだけ。この少ない人数でどうやって倒すか考えないとな」
「全員の特徴と戦術は知っています、助けになるかは分かりませんが」
「大魔道騎士は基本一人で4大天の一人を対処する形でいいな?残った二人は数人がかりで仕留めるのを余儀なくされるが… ぶっちゃけ無理そうだな」
大半の大魔道騎士はもしもの事に備えてラースに残っており、魔道騎士もほとんどが
「フォルネ、あいつは信用してもいいのか?」
「あいつって… フォルネウスの事ですか?」
「ああ」
「信用できますよ、僕の命を賭けてもいい」
フォルネウスの力は頼りにできる、と同時に不安でもある。彼女は悪魔だ。もしバルバトスのように人間に敵対したらどうする?誰も止められるはずがない。
「まぁ仮にもしフォルネウスが暴れても、俺とこいつで何とかするからな」
そう言って寝てる男を指差した。
「そういえばそちらの方って」
「ん?こいつはダンダロス・ドーントレスだ。おら寝てないでちゃんと会議に参加しろ!」
クーフーリンさんがダンダロスさんの椅子を蹴って起こした。さっきまで欠伸をかいてた男は衝撃で飛び起きた。
「んあ?終わったんかぁ?」
「てめぇは少し集中しろ、みっともねぇ」
「はぁー、ったくよぉ、先輩を敬えや」
男は2mはあった。身体も筋肉でガッツリとしている。こんな男が魔術を使うとは到底思わない。
「おうおう、んだぁその眼はぁ?文句があるってかぁ?」
「いえ別に…」
そういえばこの人、攻略戦の参加してなかったけど、どこに居たんだろ?大魔道騎士なら前線に駆り出されるはずだけど。
「フォルネ、すまないが他の隊員に伝達を頼んでもいいか?」
「は、はい」
用済みな僕は新しい仕事を与えられたというわけだ。他の隊員は大体宴に集まってるから大食堂に向かおう。廊下を歩いてる途中、知ってる顔に出くわした。綺麗な長い金髪のスタイリッシュな女性、ミランダさんのお姉さんだ。僕の顔を見るなりオドオドし始めた。なんか似てるな。
「あ、あの!フォルネ・ボイルだな?」
「え…!はいそうですけど…」
「そのぉ、一つ聞きたいことがあるのだが…!今いいか?」
「ええと、手短に…」
「うむ、その、妹の事は知っているな?そのー、妹とはどういう関係か、聞きたくて、」
「どうって… 普通に友達ですけど」
「恋愛感情はあるの?」
「え!急に言われましても… いやぁミランダさんは美しいですしー… ないといえば嘘にもなります…」
「じゃあ、あの子を嫁に迎えてくれないかしら?」
唐突な発言に頭が真っ白になった。嫁?ミランダさんを?誰が?僕!?え、ええ?なんでそんな話に?。
「困惑すると思うけど、落ち着いて聞いて。あたしはあの子をこんな危険な場所にいてほしくないの。だからあなたが結婚してどこかの田舎で静かに暮らしてくれたら、あの子のためになる」
「それじゃミランダさんの気持ちはどうなるんですか?彼女はあなたと一緒に居たいように見えましたが、あなたは彼女の意見を聞かず勝手に決めるんですか?」
「彼女には申し訳ないわ。でも仕方ないのよ、あの子はあたしと違って魔術の才能はない」
「僕は… ミランダさんの意見を尊重します」
「それであの子が死んだら責任とってくれるの?お願いだから、協力して。あの子には幸せになってほしいの、どこか安全なところで」
「ミランダさんはそんな人じゃない、知人に言われて駆け落ちするような人じゃありません。失礼ですが、僕用事あるんで」
颯爽とその場を後にする。お姉さんの気持ちも分かる、正直協力したい。けどミランダさんが首を縦に振るとは思わない。とりあえず僕は全員にガゼロさんからの伝言を伝え終え、落ち着こうと思って大食堂に腰をかけた。明日から最終決戦だ、緊張というより恐怖が込み上げてくる。しばらくすると床で寝ていたフォルネウスが起きた。
「なんじゃフォルネ、震えておるぞ」
「少しね…」
「なんじゃ怖気付いたのか?」
「…」
「…なぁフォルネ、わちに身体を委ねないか?」
「え…?」
「悪魔特有の能力じゃ、魂を共存ではなく完全に支配し乗っ取ることができる。お主の意識は無くなりわちが代わりにその身体を動かす。明日の戦い、わちがお主と入れ替わっても良いのじゃぞ?」
「… それは結構かな?僕はまだまだ大丈夫だよ」
「そうか?ならいいんじゃ」
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