Part2
手紙を読み終え、机に置いた。
私はコップを持ちラテを一口のみ、甘さとちょっとした苦味を味わってからもう一口飲んだ。
そして頭を抱えた。
どういうことなのだろう。
これは本当に未来の私からなんだろうか...。
ハルって一体誰なんだろう...。
お互いの破滅??
ますます訳がわからない。
とりあえず私はラテを飲み干し、店を出た。
そこで偶然、田中くんとばったり出会った。
「あれ、猫月さん今日もここ来てたんだ〜。」
相変わらず呑気そうに笑顔でそう言ってきた。
「うん〜、学校の帰りだよ。田中くんは??」
「俺も、同じく〜。今から帰るの??」
「そうだよ。田中くんは??」
「俺、今から塾なんだ。また明日〜。」
そう言って田中くんは去っていった。
自分の頬があったかくなり、鼓動が速くなっているのを感じながら、ふと思った。
田中くんの下の名前ってなんだろう...。
家に帰ってからシャワーを浴びて楽な格好になってから田中くんが帰ってくるまで待って、そろそろかなというタイミングでDM送ってみた。
「塾お疲れ様〜。ねぇ田中くんの下の名前聞いてもいい??誰にも言わないからさ。」
「え、うーん。まぁもう猫月さんになら言ってもいいかな、ホシっていうんだ。
星空の星。なんか変だろ、親が星が好きだからってつけたんだ。」
「変じゃないよ!」
私は咄嗟に打ち返していた
「星ってすごい素敵な名前だと思う。私は好きかな。」
「そっか、猫月さんにそう言ってもらえるのは嬉しいな。
そろそろ寝るね。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
DMをし終えると私は、フーッと一呼吸した。
田中くんはハルじゃなかった。
じゃあ、ハルって一体誰なんだろう。
悶々としながら学校に行き、その昼休み。
「ねね、ユメは最近なんか楽しそうだよね??
もしかしていい出会いでもあった?」
そう、言いながら唯一の親友、ユナに話しかけられた。
なかなか人見知りのせいで友達ができない私にとって、ユナという存在は特別な存在で、まるで心が読まれてるかの如くいつも寄り添い、助けてくれる、そんな存在だった。
思えば田中くんと出会ってから、すっかりユナのことを放置していた気がする。
「ねー、ユメ?聞いてる〜?」
ほっぺをむに〜っと引っ張りながらユナが聞いてきた。
「あーごめんごめん、ぼーっとしてた。」
私は苦笑いしながらそう返した。
「で、どうなのよ。素敵な出会いあった?」
「うん、まだ友達だけど素敵な出会いがあったの。」
「あんた...ちょっとは感情を隠すってことしなさいよ。
思いっきり恋する乙女の顔になってるじゃない...。」
「えっ!それは、、困るにゃ~~」
「結局デレデレじゃないのよ。まぁでも幸せならいいわ。
ただし、もし少しでも気になることがあるなら注意しなさい。
(特に能力で(ボソッ)」
ユナは少しニヤケ顔でそういった。
ユナは能力のことをなぜかいつの間にか知っていたので、たびたびそんな話もするのだ。毎回はぐらかせられるがユナも能力者らしい。
「わかったよユナ。気をつける。」
「うん。楽しんでおいで。」
私たちは笑顔で抱き合った。
一週間後、田中くんとカフェで話をしている時にふとスマホの壁紙が、
田中くんと知らない女の子の写真であることに気づいた。
「ねぇ、その写真の子かわいいね。誰なの?」
私が何気なく聞いてみると、田中くんは飲んでいたカップを机に置き、
急に暗い顔をして、
「死んでしまった...死んでしまった、俺の大切な親友だ。
名前はハル。大切で...ずっとそばにいて...そばにいたかった人だ...。」
と、言った。
その声は怯え、いつもの田中くんとは正反対の声だった。
私は、その写真と表情、そして死んでしまったということから、
前に田中くんに好きって伝えた時の不思議な反応の答えに結びいついた気がした。
「前に、私が田中くんのこと好きって言ったら、もう恋はしないって言ってたよね。
もしかしてこの人のことが好きだったの??」
私は少しやきもちを焼いてそう聞いてしまった。
田中くんは少し機嫌悪そうに、
「そうだよ、でも伝えられなかった。」
そう言って黙った...。
その後私が色々と質問してもカフェを出るまで田中くんは黙ったままだった。
カフェを出た後、
私が、じゃあねと言って離れようとすると田中くんはボソッと
「今もいるんだ...。見えるんだよ、俺には。」
といった私はなんのことかすぐにわからなかったが、
「もしかして、ハルのこと??」
と聞いてみた。
田中くんはそうだと答えた。
「ここにいるように感じることがあるんだね。そっか〜。」
そう言いながら私が抱きつき背中をさすると、田中くんは気持ちの抑えが効かなくなったのか大粒の涙を流した。
その日の夜、私は未来予知を見た。
田中くんと私が恋人になっている姿だ。
こんな未来が来ればいいな。
私は強くそう願いながら目を閉じ、眠った。
それからというもの、田中くんはハルについてたくさんの話をしてくれた。
でもその度に寂しそうな表情になっていった。
私もハルに嫉妬をたくさんすると同時に、その人柄や性格、田中くんとの行動に不思議と惹かれていった。
そして、だんだんと田中くんから聞くハルの姿に、無意識に自分を似せていった。
クリスマスイブの夜、私は田中くんを呼び出した。
田中くんは微妙な顔をしながら、
「こーゆう日は、恋人と過ごすものなんじゃないか?」
と言った。
私は、はっきりと元気な顔で目を見て言った。
「私ね、田中くんが好きなの。大切で恋人にもなりたいの。でもハルのことが忘れられないんだよね。ならいいよ、ハルと田中くんと私の3人でとりあえず生きていこうよ。」
「俺も猫月さんのこと好きだった。でも、ハルのことが忘れられなくて...。
いいの?そんな俺でも。」
「いいの。私がそう言ってるんだからいいんだよ。
私は田中くんと一緒にいたいの。だからここにいる。"ほらハルもここにいるよ。"」
私がそう言って抱きつくと、田中くんは大声で泣いた。
"ほらハルもここにいるよ"というのはハルの口癖だったらしい。
私は自分がハルと重なっていくことがだんだんと心地良くなっていった。
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