『深夜の散歩で起きた出来事』★★

 俺が深夜のコンビニから家へ歩いて帰っていた時のことだ。

 暗い夜道に女が一人で泣いている。


 こういう時は、見て見ぬフリをしてあげるのが親切だろうと思い、俺は、一歩手前の道を曲がった。

 少し遠回りになるが、深夜の散歩は、何故だか気持ちが高揚する。

 誰もいない異世界に来てしまったような気がするからかもしれない。


 しばらく歩いて行くと、公園に差し掛かった。

 公園には、たくさんの猫たちが集まって、必死に何かを話し合っている。


「悪い魔法使いが吾輩たちの国を乗っ取ろうとしている!」

「許せないニャ! 断固戦うニャ!」

「今こそ救世主を召喚するのニャー!」


 どこの世界も大変だなと思い、俺は、そっと公園の横を通り過ぎた。


 幾らか歩いて行くと、宇宙人と出会った。


「%◎▼#WWW」


 何を喋っているのか分からないが、とりあえず、交番の場所を紙に書いて渡してあげた。

 ちょうどコンビニでノートとペンを買っておいて良かった。


 再び歩き出した俺の目の前に、ヒーローが現れた。


「今ここに、宇宙人が来なかったか?」


 俺は、先程宇宙人に教えてあげた交番の場所をもう一度紙に書いて渡してあげた。

 ヒーローは、白い歯を光らせてお礼を言うと、赤いマントをなびかせて空へと飛んで行った。


 家の近くまで辿り着いた時、俺は、また泣いている女に遭遇した。

 もう遠回りは出来ないので、仕方なく傍を通り抜けようとすると、後ろからがしっと肩を掴まれた。


「……ねぇ、待ってよ。どうして泣いてるのか、聞いてくれないの?」

「どうして泣いているんですか?」


 女は、延々と自分の生い立ちから今に至るまでを語り始めた。

 俺は、途中、何度も眠ってしまいそうになるのを必死に耐えて、相槌を打ち、女の話を聞いた。

 空が明るくなる頃、女の姿は、跡形もなく消えていた。


 結局、深夜の散歩は、何事もなく終わった。

 俺は、家へ帰ると、読みかけのライトノベルに手を伸ばした。


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