第7話 これはまさしく白昼夢!

女が方眉をつり上げて俺を咎めたのですぐに手を離したがその重みと感触のよさは絶品もので、暫く、いや終生忘れられそうにない。しかしいつまでも側に立つ野暮天は憚られたので俺はボックス席に戻ったが目はショーの続きを期待して女に釘付けである。次に女は茶色のチノパンのジッパーを下げると腰を浮かせてこれを膝までおろし、右足左足と抜いてカウンター上の脇に置いた他の衣服といっしょにした。遂に今や赤いレースのボックスショーツ一枚きりの姿となってしまう。両の手を仙骨の両脇辺りに当てて胸を反らし、顎をあげてのけぞってみせる。乳房と云いくびれた腰と云い、もとよりその容姿と云い、これ以上はない理想的な女体美の極致である。それを文字通り見せつけるようにしばし誇示して見せたあとで、女はようやく脇に置いてあった赤いランジェリー風の肩紐ドレスを手に取った。足を差し入れ腰を浮かせてドレスをウェストあたりまでたくし上げると右手左手と肩紐に入れて一応は身に纏ったが、未だ背中のジッパーは開けたまま、ドレスはウエストあたりにたくし上げたままで、赤いランジェリーショーツと白い両脚は丸見えのままだ。俺はと云えばあれよあれよの白昼夢の展開に魅せられ切って、一物はいきり立ち、今にも射精しかねない始末。我が年令の52から34を差し引いた時分まで若返ったような、もっと云えば始めて女体を見たような童貞のごとき為体(ていたらく)をなしている。これは思うに今のこの場と状況が現実ではなく夢中だとするならばさもやありなんとするような塩梅なのである。夢の中では感情や欲望が精鋭化され制御が効かなくなると云うではないか。まさにその如しなのだ。

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