第5話 はい、どうぞ。中へ…

「あ、あの…」女がまたふり向く。あの神秘的な微笑みを保ったままで。「あの、お、お店をこれから開けるんですか?その…もう中に入れるんですか?」などと馬鹿なことを聞く始末。営業準備というものが当然あるだろうに、これじゃあ女に欲情してまといつく童貞のガキと同じじゃないか。さすがに赤面して何か言いわけを述べようとする俺に、しかし女は黙ってただ肯き右手でもって中へ入るようエスコートする仕草を見せたあとで、ドアを開け放したまま店の奥へと歩いて行った。俺は点けたばかりのわかばを無理矢理携帯灰皿に揉み消すとまるで夢を見るような面持ちで店内へと入る。6坪ほどの店内は奥へ続く長いカウンターがあってその前に座席が10ほどあり、向かいにボックス席が3席あった。その内のひとつの前で女は立っていてここの席で待つようにと仕草で合図する。そのまま店の奥まで歩いて行ってスイッチ類をいじって店内を点灯させたあと、女はコートをカウンターの上に無造作に脱ぎ捨てた。ボックス席に腰掛けている俺の目の前を形のいいお尻を見せつけるかのように悠々と歩いて行き表のドアを閉める。カウンターの内から灰皿を持って来て俺のテーブルの上に置くと自分のブラウスの裾を上まで大きくめくり上げて見せ、掌を下に向けて「着替えるから待っててね」の意を伝える。その際きめの細かそうな真っ白な肌が大きく露出し、赤いレースのブラジャーまでが垣間見えた。年甲斐もなく股間の一物が反応する。それを楽しむかのように視線を投げてから女はまた店の奥に行って、今度は控えの小部屋に一瞬消えたあとすぐに手に真っ赤なドレスを持って現れた。

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