バー・アンバー 第一巻

多谷昇太

第一章 圧巻のストリップショー

第1話 俺は介護ジャーナリスト

 10月も下旬の平日、ここ渋谷駅前ではうっとうしい曇り空が晴れて小春日和の日差しが射して来た。時刻は昼の2時過ぎで新規の介護給付費分科会の内容を探る為に同会理事たる某氏へのインタビューをさきほど終えたばかりだ。これからねぐらの横浜市内の団地に帰って業界紙に出すブログ記事を書かねばならない。シルバー全盛の世の中、昨今の流行り病もあって所属する業界紙の部数もそこそこ堅調のようだ。結構なことなのだろうが一記事いくらのしがないフリーライター稼業の俺にはその余禄もなかなかまわって来ない。クラウドソーシングを介して他業種のクライアントからの仕事も受けるが、この業界以外には専門知識のない俺であってはまともな実入りとは余りならない。その内の一つティーンエイジャー専門誌からもらった仕事を片付ける為に、渋谷に来がてらこれからセンター109に行ってギャルへのアクセスや、合わせて同店の人気ショップを探ろうとも思うが余り気乗りがしない。ギャルからは変態親父扱いされかねないし、先程の理事面丸出しにした御仁への気遣いで気がクサクサしていたからだ。しかしいずれ正式なインタビューと撮影の申し込みを109にせねばならず、その前に人気ショップだけでも立ち寄ろうとしたのだったが、その109の前まで来たところで勝手に足先の方向が変わってしまった。右横の文化村通りの歩行者信号が青になったのをいいことにそのまま通りを渡ってしまう。

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