8話 ギルド内で


 昨日の厄日から1日が経過した。


 あの後は全てを忘れたくてベッドにダイブしてふて寝した。お陰で今は多少マシな気分である。


「今日も行くかぁー」


 本当は休みたいが、昨日のクエストは未達成で終了してしまったので収入はゼロである。昨日の分も取り戻す為にも今日は頑張らなければ。






「なにか、何か良い依頼をぉお!!」


 ギルドに到着した俺は速攻で掲示板で割りのいい仕事を探す。なぜか、周りにいた冒険者が俺を避けているような気がするのはきっと気のせいだろう。


 血眼で必死に探していると肩を叩かれた。


「お、おぉ。どうしたんだグレン? 目がめっちゃ血走ってるぞ」


「あぁ、スピナーか。俺は昨日のオーク討伐未達成だからな。今日こそ達成させないと!」


「あ、そうそう! それだよ! お前大丈夫だったのか!?」


「何が!?」

  

「ほら、あれだよ。昨日ネームドがこの辺りに出現しただろ? それで場所がロイア山脈だからもしかしたらと思ってよ」


 あぁ、昨日の件ね。あいつら、報告したのか。通りでなんかギルド内が騒がしいと思った。


 けど、できればその話題は俺の前ではやめて欲しい。もう、思い出したくないんで。


「俺は全然無事だったな。オークが全く出てこなかったこと以外は平穏そのものだった」


「そっかぁ。そりゃ運が良かったな」



 いや、違うんだよ。逆なんだ。昨日は運が悪かったんだよ。


「まぁ、でも。それも全部あのパーティが………あ、ほら、英雄が来たぞ」



 割りのいい依頼。良い感じに金払いの良い依頼はどれだぁ? これかぁ? それともこれかぁ?


「いや、見ろや……」


「んなことどうでも良いんだよ! そんなことより俺は昨日の分まで働かなきゃいけないんだ! 昨日のオークの討伐が不発に終わったせいでな!!」


「お前なぁ。あいつらが討伐してくれなきゃ、そのオーク討伐に行ってたお前は死んでたかもしれないんだぞ?」



 その言葉に俺は思わず鼻で笑ってしまう。



「何をいうかと思えば。俺の逃げ足の速さを知らないわけじゃないだろ? 嫌なこと、危ないことから逃げることに関して俺は誰にも負けない自信がある」


「威張れることじゃねぇな」


「つーか暇ならお前も探してくれよ。どれが良いと思う?」


「えぇ。めんどいからパスで」


「この薄情者がっ!!」



 仕方ないのでまた1人で目を血走らせながら掲示板を見つめる。すると、またスピナーが変なことを言ってきた。



「何してるの?」


「いや、だから昨日は依頼未達成だから今日必死に探してるんだって」


 こいつは鳥頭か? さっき言っただろ。


「……ん?」


 あれ、スピナーの声にしては高すぎるような。まるで女の人のような声だった。


「………」


 振り向くと、そこには1人の少女がいた。いや、痴女の間違いだろうか? 


 小さな身長に何を考えているのか分からない無表情の顔。


 そこにはつい先日、好きでもないのにも関わらず、俺にとんでもない発言をしたリズが俺を見上げていた。



 いや、俺じゃないかもしれない。一回周りを見渡してみよう。


「貴方に言ってる」


「……俺?」


「そう」


 どうやらマジで俺に話しかけているようだ。


「……」


 いや、ほんと、勘弁してくださいよ。


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