第45話 巡り


 俺が駆けつけると、カーラは眠っている。横には灰が積もっていた。どうやらあいつは死んだようだな。


「ジギン先生はどこだ?」


 すぐに魔力探知を使う。外に弱々しいが微かに魔力を感じる。俺はその場所は移動する。ジギン先生は怪我をしているが生きていた。


「とりあえず、2人を運ぶか」


 俺は2人を抱える。そのまま2人を医務室まで運んだ。


「……くそ」


 自分に嫌気が差してしまう。本当に駄目だ。すっかり気が緩んでいた。もう少しで取り返しのつかないことになるところだった。


「それに……少しやばいな」


 俺の切り札の1つが無くなった。それにもう一つの方もかなりまずい状況だ。


「やっぱり、だいぶ壊れてきてるな」


 嵐壊を取り出して見ると、ヒビが入っていた。完全には壊れていない。だが、あと数回も使えば壊れるだろう。


「さて、どうするか」


 俺の力は大幅にダウンしたと言って良いだろう。父さんが鍛えてくれたお陰で魔力と肉体は怪物並になったが、それでも魔法は中級程度しか使えない。おまけに戦術や体術だって平均的だ。


「……やることは1つだな」


 まず、強くなることを考える。この魔力を最大限に活かせる戦い方を覚える必要がある。それが俺が1番強く戦える方法だ。魔法は……無理だな。中級までの魔法じゃ効率が悪い。魔力を限界まで使うなら……そうだな。あれが1番ーー


「ん……あれ、ここは?」


「よぉ、カーラ。目が覚めたか?」


「え……グレンさん!? 無事だったんですか!?」


 カーラは俺を見るなりガクガクと揺さぶってくる。寝起きなのにすごく元気だ。あ、ちょっと待って。これ、結構揺れてきつい。


「ちょ、ちょっとストップ。これすごく酔う」


「あ、すいません」


「……えっと、カーラは何もされてないんだな?」


「っ……はい」


 どうやら思い出したくないようだ。なら、もうこれ以上は聞かない方が良いだろう。男の俺がいたらしんどいかも知れないな。俺は立ち上がって部屋を出ようとする。


「ま、待ってください!!」


「…どうしたんだ?」


「あの、これを……」


 カーラはペンダントを取り出して俺に差し出す。そう言えばペンダント渡したな。俺はそれを受け取ろうとする。


「グレンさん。貴方は本当に何者なんですか?」


「………え?」


▲▲



 落ち着いた私は、彼に色々聞きたいことがある。あのペンダントに込められていた魔力量、なぜ、ジゼルと一緒にいて生きているのか。


 そして貴方が仮面の人ですか? と。私は彼からの答えを待つ。


「……お、俺はただのグレンだぞ? ランク4の冒険者であの街『アルマータ』で暮らしているただの善良な一般人だ」


 グレンさんは顔に一滴の冷や汗を流している。それに視線も泳いでいる。すごく怪しい。でも、それ以上にーー


「ふふ、なんですかそれ?」


 私はおかしくなってしまって笑ってしまった。彼は明らかに答えをはぐらかしている。でも、言いたくないならそれでも構わない。私はグレンさんを見る。


「……ん? どうした?」


「やっぱり、貴方の色はすごく落ち着きます」


「え……?」


 彼の色はこんなにも暖かい。彼が悪人ではないことが分かる。あの3人と一緒でとても安心する。だから気を許してしまう。もう、この力のことを言ってしまっても良いだろうか?


「グレンさん。少し、私の話を聞いてくれませんか?」


「……あぁ」


 彼は私の顔を見ると、落ち着いた顔で近くの椅子に座る。私は覚悟を決める為に一度、大きく深呼吸をする。


「……実は、私もスキルを持っているんです」


「え、そうだったのか?」


「はい、私のスキルは『色分けのカラーペケーション』相手の感情が色で認識できます。と言っても大体3種類ほどしか見えないんですけどね」


 私は今の気持ちを隠すように少しだけ笑う。初めてメンバー以外の人間に言ってしまった。彼はどんな反応をするのだろう。怖い、それとも気持ち悪いと思うのか。彼がどんな反応を、色に変わるのか。私はだんだん怖くなって来て、目を閉じてしまった。



「………へぇー。すごいな」


「………え? それ、だけですか?」


「え、なんかごめん。もっと驚いた方が良かったか?」


 彼はいつもと変わらなかった。色も態度も何も変わっていない。私は安堵してしまい、大きく息を吐いて布団に顔を埋めてしまう。


「え、本当にごめん。まさかそんなにがっかりするとは……」


「ふふふ、違いますよ。がっかりなんかしてません」


 むしろその逆、私はすごく嬉しい。何も変わらないことに。私の親はこの力を伝えた時に恐怖の色に変わった。いや、あの人たちのことを考えるのはやめよう。私は嫌な思い出を思い出さないようにしていると、急に医務室の扉が開いた。


「お兄ちゃん、大丈夫!?」


「ルキナ、怪我人がいるんだから静かに!」


 グレンさんが勢い良く入ってきたルキナさんに小声で話しかける。ルキナさんは小さな声で謝罪した後に私たちの元へやって来た。


「ルキナさんも大丈夫ですか? 怪我は無いですか?」


「えぇ、私は大丈夫ですよ」


「2人とも無事で良かったぁ! 2人も知ってると思うけどさっきこの学園を覆うくらいのいろんな武器が突然現れてしかもそれが爆発したでしょ?」


「え……?」


 私はそれを聞いて目が点になりそうだった。そんなことは知らない。いや,確かにあの武器も爆発した。もしかしてそれがそうだったのだろうか? 私は、もしかしてと思い、グレンさんを見る。


「………」


 彼は何故か窓の外を見ていた。そして外を見終わると、私たちの方へ向く。


「そうだ! 俺はこの一連の事件を報告してくる! ルキナはカーラの看病をしててくれ! じゃっ!」


「あの! ペンダン……ト」


 彼は急ぎ足で医務室を出て行った。結局、彼の仕業かどうか分からなかった上にペンダントも返し忘れた。どのタイミングで返そうか。私は青色のペンダントを見る。


「……ふふ」


 私はペンダントをぎゅっと握った。



————


遅れてすいません。次の話はそこそこ早く投稿します

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