第2話:地味な仕事の休憩場所
「安藤、お前独りが貧しいわけじゃないんだ、俺には貧しい人間の知り合いが多い」
アルバイト仕事の休み時間中、安藤仁は会話していた仕事仲間と休憩場所で過ごしていた。そこは喫煙所である。しかし、安藤仁では煙草を吸わなかった。彼は未成年だし、相手は
「貧しいのは、俺だけではないのか」
「そうだ。それに俺の吸うたばこさえ買えない奴はいる。ちょっとぐらいなら、お前も吸ってみないか?」
「いいえ、やめておきます」
「いいじゃんか、ちょっとぐらい」
「俺にはある趣味があります。だから佐久間さんの行為は遠慮しておきます」
「一体何だ、その趣味は」といった佐久間の気にする視線、安藤はただ純粋に口から出す言葉が詰まらず出てきた。
「歌うことです、そのため声は駄目にしたくないんです」
「どこかで歌を披露しているのか?」
「歌うことぐらいはどこでもできます。あくまで今のところは趣味ですから」
「何かしら楽器は弾けるのか?」
「アコースティックギタ―を一本持っています。本当は、路上ライブで活躍したいのですけど、資金はありません。何せ、自宅用のアコースティックギターの弦を張り替える資金さえないほど貧しい生活ですから」
「そうか、そのアコースティックギターへ弾きたい夢があるから、ここには働き口で努めていたいんだな」
「その通りです」安藤は答えた。「近頃で、ここのアルバイトから必要な資金を集められます。そうなれば仕事を止めて路上ライブの方へ向かえます」
「近頃なんて言うが、あとどれくらい働くつもりなんだ」
「後一か月ほどです」
「……それからバンドメンバーは、どこで集めるつもりなんだ?」
「地元の楽器店屋に張り紙があります」安藤は答えた。「その募集口でバンドメンバーは受け付けていて得られるそうなんで問題はありません」
「それなら、曲を歌うためで作曲者を募集するのか? 正直言って大変だと思うぞ」
「その心配はいりません」安藤は答えた。「俺に曲は即興で作れます。後では、それを披露する人員さえ集められたら何も問題ありません」
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