『サラダ記念日』を読む

箱女

1.誰にでも書けそう感

 歌人・俵万智によるこの一首と出会ったのは中学校の教科書でした。

 ページを開けてくださいと言われてぱっと見た感想は、失礼ながらなんなんだこれというものでした。中学一年生の目にはこのシンプルな文字列が作品として映らなかったように記憶しています。

 何気ない日常の一ページを鋭く切り取った作品。私はそんなふうに中学校で教わりました。

 授業にそれほど前向きではなかった私はとくに疑問も抱かずに、ああそうなんだとノートを取るだけで済ませました。


 疑問を抱けばよかったのに。


 結論から言えば私はこの作品をすごいものだと捉えています。それも日本文学史上でもかなりのインパクトを残すくらいの規模感で。

 授業で『サラダ記念日』を取り扱った方も多くいらっしゃると思います。いまでも教科書に載っているのでしょうか。これは私の体験談ですが、授業の課題として日常を切り取った短歌を詠んでみようといった取り組みをしたものです。同じ宿題を出された方もいらっしゃるでしょう。

 短歌に触れるという意味ではいいんじゃないかと思います。とても身近に見えますから。ですがそのやり方だと『サラダ記念日』のそれ以上の意味が見えにくくなってしまいます。誰にでも書けそうな、簡単な短歌。意外とカタくないんだな、くらいの印象を残して通り過ぎてしまう。悪く言えばナメられてしまう。

 とんでもない。本当はそんなことはありません。多面的な作品ですよ。この少ない文字の数でよくこれだけ意味を込めたなと驚きを隠せません。もちろん私もまだまだ甘い読み方しかできていないのだと思いますが、それでも、と言いたいほどに。


 前フリはこれくらいにしておきましょう。次回から内容に入っていきます。ですがあくまで個人的な読み方ですので、気楽にどうぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る