第二章 はじめましての新生活②
乗せてくれたお礼にしっかり
物々しい
「名前と目的を。通行許可証があれば
石造りの
表向きは友好関係を
だから、実家と
「名前はトリア。目的は、えー、婚約者であるキールストラ帝国の皇帝に会うため?」
「くだらない
「ちょっと待って。これこれ、これが通行許可証の代わりになるかしら」
トリアは右手にはめている腕輪を見せる。細やかな
腕輪はラウから贈られたものだった。金色の
あの
引き留めようとする王国側の意思は完全に無視。しかも晩餐会に
どうせ
「ほ、本物……! 国章を身に付けられるのは、現在の皇帝のみということは……!」
さあっと、目に見えて軍人の顔色が青く変化していく。
「も、申し訳ございません! 非礼をどうかお許しください!」
直立不動の姿勢を取った軍人は、腰を九十度の角度に
腕輪を見ただけでトリアの
最近の帝国軍は飛ぶ鳥を落とす勢いで実力を付けているらしい。実際の帝国軍人を見ると、それも納得できる。
(しかも、帝国には王国にはない戦力、
王国には魔術の
反面、帝国では魔術が一般的に広まっている。実際に魔術を使える者は多くなく、戦力として利用できる魔術師となるとさらに少数らしいが、過去、長年続いた戦争では王国は魔術師の存在に苦しめられてきた。
現在の皇帝、ラウもまた魔術師らしい。
(
トリアは魔術に対して悪い
「今すぐに帝都までの
「あ、大丈夫よ。わたしは一人で行けるから」
軍人が「は?」と目を丸くする。表情が
帝国を訪問する予定は晩餐会から一月後だった。だが、帝国側の予定に合わせれば、
とっととあの家を離れたかった、というのも大きな理由の一つではあるが。
(見世物にされるのは、あの晩餐会だけで十分だもの)
しかも、供も迎えもいない状態ならば、城に向かうまでの間、自由に帝国内を見て回ることができる、という算段もあった。
「あそこにいる馬を一頭借りてもいい?」
「はい、馬をお貸しするのは一向に構いませんが……え、馬?」
混乱する軍人の横を通り過ぎる。国境を越え、足早に
あらかじめ帝国の地図は確認してある。国境から南西へと続く街道は、帝都バランジース、そして皇帝のいる帝城へと続いている。
皇帝の婚約者が一人で現れ、しかも馬に乗って勝手に帝都まで向かおうとしているという突然の事態に、心身共に
「お、お待ちください! すぐに
「皇帝陛下には遅くても五日程度で城に
「わかりまし、いえ、だからそうではなく! 帝都に続くこの街道は現在通行が……!」
白馬にまたがったトリアは、あわあわしている軍人たちを横目に
トリアは生まれてから一度もノエリッシュ王国から外に出たことがない。だから、これが初めての外国だ。初めて母国以外の国へと足を
この機会に
「いけません、帝都には北の
背後から聞こえてくる声は、馬を駆るトリアの耳を
そして、トリアが帝都に
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