この花の腐らせ方

千崎 翔鶴

0.花

 植物の種子とは、休眠をするものである。水と、十分に呼吸できる酸素と、それから春になったと判断する温度となったときに、初めて目覚めて芽吹くという。

 芽吹くことなく、朽ちれば良かったのに。けれど、芽吹いてしまった。

 芽吹いた芽には水をやらねば、光が当たらねば、そのまま枯れていくものだろう。

 成長することなく、そのまま枯れればよかったのに。けれど、水は与えられ、その芽は知らず知らずのうちに成長してしまった。

 植物は、光の当たる長さの変化によって、蕾をつけるのだという。明るい時間が一定以上になれば、あるいは暗い時間が一定以上になれば、蕾をつける。

 蕾などつけなければ良かったのに。

 あるいは開花せずに、蕾のままに腐ってしまえば良かったのに。


 けれど気付いた時には、すでに芽吹き、成長し、蕾をつけて、花が咲いた。

 けれどこの花は実を結ぶことなく朽ちていく。


 誰か、どうか。

 この花の終わらせ方を、教えてください。

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