第17話 カラメルはビターで
「え~と、悪魔とは…悪を象徴する超越的な存在を表す。他にも宗教によっては…」
{じゃ~か~ら~。我は悪魔であっても、悪ではないのじゃ!それに、先程まで散々悪魔や我についての質問に答えてやったというのに…。今更この世界の悪魔について調べなくてよいじゃろ。}
「いやまあ、人に聞いてばっかりだと情報が偏りそうだなぁと……。」
{この世界にいる悪魔は我だけなんじゃから、我以外に聞いてもそれはガセと同じじゃろうて。ちっとは頭を使ったらどうじゃ?}
ちくしょう。正論すぎて何も言い返せない。
イラっとはしたが、たくさん質問に答えてくれたし何も言わないでおこう。
私は悪魔についての情報を集めていた。
その情報が帰還の手がかりになるかもと思ったのもあるけど、自分の体でもある魔王もとい悪魔の特性を知っておきたかったのだ。
キーボードに触れる手を止め、私は魔王から聞いた情報を整理する。
その中から、魔王の帰還に使えそうなものを考え…考え…
「いや、分かんないよ。聞いただけで、魔法の特性が分かるほど私は賢くないもん。はあぁ~、やっぱり地道に臣下に会って聞いてみるしかないのかな~。」
現状、手がかりらしいものは一切ないのだ。
こんな風に色々試してなんとか手繰り寄せるしかない。
それはそうと、魔王について尋ねる最中、面白いことが聞けたのだ。それは…
「そういやビックリしたよ。まさか、魔王が最初はただの村娘だったとはね~」
{なんじゃ?いくら世界最強の我にも幼少の頃はあるのじゃ。分かったらその薄ら笑いはやめるのじゃ。気色悪い。}
言葉つよ。この私の美麗なご尊顔に文句を言うほどとは、あまり触れてほしくない話題みたい。
しっかし、聞いた限りだと悪魔はあまり人間と変わらない生活をしていたようだ。
私のイメージではもっとこう…人間に召喚されたら、召喚した人ごと人々を惨殺するような…とにかくそんな奴らだと思っていた。
レッテルを貼るのは良くないな。
そうだ。
魔王が村にいたのなら、家族や近所の悪魔はどんな悪魔だったんだろうか。
やっぱり、あまり人間と変わらないのかな?
「魔王。そういやあんたの家族ってどんな人たちなの?村で育ったって言ってたし、畑仕事とかしてるわけ?」
{……母上と兄上は死んだのじゃ。人間の手でな。}
「あっ……ごめん。」
やってしまった。
そうだよ。魔王は家族を殺されたから、魔王軍を立ち上げて人間に復讐してたんじゃないか。
「で…でもさ。ほら!お父さんは?さっき言わなかったってことは、今はもしかしたらこの世界のどこかに……」
{あんなやつ、死んだ方がマシじゃ!!アイツは誇り高き魔王軍を汚した!あんなゴミなど、今頃向こうの世界の人間に殺されるのが関の山じゃ!!!}
声を荒げた魔王の怒りが、こちらにまで伝わってくる。
やらかした。
なんでこう、地雷を踏んでしまうんだろ……。
「…えと、その……」
{ああ…すまんかったのじゃ。つい声を荒げてしもうた。}
「ごめん…。こんな…」
こんな甘ったれた人生を生きてきた私が、勝手に歩み寄って申し訳ない。
きっと私には想像もできないほどの地獄を数多く味わったのだろう。
自責の念が胸の奥から溢れて来る。
{………ふん。そうじゃ、我の母は昔、我の誕生日に手作りのぬいぐるみを贈ってくれたんじゃよ。子供のころの我にはそれは宝物みたいで、心底嬉しかったのを今でも覚えておるのじゃ。}
「……え?」
{え?ってなんじゃ貴様。貴様が我の家族について聞いたのじゃろうが。}
まさか魔王が答えてくれるとは…。
臣下のゲルゼナードの手伝いをしたからだろうか。
なんにせよ、少しは仲良くなれたのかもしれない。
「ははっ、あははっ…」
{なんじゃ、なぜ笑う?}
「いやっだって、あんたみたいなのが、ぬいぐるみで喜んでるのが面白くて。」
気恥ずかしくなって、つい意地悪なことを言ってしまう。
でも少し、ほんの少しだけ、心が温かい。
{ムキ~~~!!!なんじゃ貴様、せっかくこの我が話してやったというのにその態度は!?貴様も子供の頃があるじゃろうが!?我だけでは不公平じゃ!貴様も話せ!!}
「ごめんって。謝るから許してよ。ほら、この前食べたいって言ってたプリン一緒に食べよ。」
{ぐぬぬ…まあ、それならよいのじゃ。なら、今すぐ買いに行くのじゃ!食べるときは我に変わるのじゃぞ!}
「はいはい。今から買いに行くからどれを買うかはあんたが選んでね。あ、なるべく高いのはなしで。」
こうして、私たちの何気ない休日は過ぎていく。
ちなみに、魔王が力加減を間違えてプリンが潰れたので、もう一個買いに行ったのはまた別のお話。
魔王様になっちゃった! 焼畑営業 @tndask
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔王様になっちゃった!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます