ダンジョン女学院の男子生徒~目覚めたら女性しかスキルを使えない世界だったけど、僕だけスキルを使える男みたいです。貞操が逆転してる学院で唯一男子の僕は、気がつけばハーレムに!?~
むらくも航
第1話 三人の女の子
「死ぬ前に言い残すことはあるかしら」
顔を真っ赤にした女の子が、こちらを
目の前にあるのは
つまり──女の子の裸だ。
「え、あ、いや……!」
「ないのね」
心臓がバクバクして言葉が出てこない。
あわあわしている内に、頬に強烈な衝撃を覚えた。
「じゃあ死ね! このヘンタイ!」
「ぼはっ!」
ビンタと共に、僕の顔が勢いよく横を振り向く。
な、なんでこうなったんだっけ。
意識を失う寸前、僕はここに至るまでの事を思い返していた。
★
「……ん?」
カンッ、カンッ、と金属音のようなものが聞こえる。
耳に響くようなそれに反応して、徐々に目を開いた。
「なんだ、これ……」
半開きの目のまま、少し周りを見渡す。
前方には薄紫色の壁のようなものがある。
体は直立で固定され、うまく動かせない。
まるで姿勢を固定されたまま、大きな石に閉じ込められているような状態だ。
「今助けるよ!」
「……!」
金属音と共に、外側から声が聞こえてくる。
助ける?
そうか、この大きな石から出そうとしてくれているのか。
金属音は石をなんとか壊そうとしていた音みたいだ。
「うーん、結構
「そうらしいわ」
「どうしよう」
外側にいるのは……三人の女の子?
みんな
「うっ」
まだちょっと意識がもうろうとする。
──けど、そんな甘えは目の前のものを見た途端に吹っ飛んだ。
「じゃ、私のミサイルランチャーで」
「……え?」
一人の女の子の両肩から、穴ボコの四角形の兵器みたいなものが飛び出す。
“ミサイルランチャー”が何を指すかは分からないけど、明らかにやばい。
まさかそれを僕に目掛けて!?
「ちゅどーん」
「うわあああっ!」
それが発射される寸前、
僕はそのまま勢いよく飛び出した。
「う、うーん……」
光にやられたせいか、目を開けるのがやっとだ。
そんな中、偶然に何か柔らかいものを掴む。
「うん?」
ふにふにとした気持ち良い感触。
微妙に手に収まりきらないサイズ感。
なんだこれ。
「ちょっと」
「え?」
そうして、段々と砂埃が消え始めたところで女の子の声が聞こえる。
さっきの"ミサイルランチャー”の人とは違う声だ。
それに……怒ってる?
そんな予想は大当たり。
「どこ触ってんのよー!」
「ぐはっ!」
何がなんだか分からいまま、僕はぶっ飛ばされた。
「いてて……」
ぶっ飛ばれた先で、少しづつ目を開く。
“ミサイルランチャー”に、ビンタ。
嵐のような目覚めだったからか、意識は完全にハッキリとした。
すると、真っ赤なツインテールの人が、胸元を抑えながらこっちを睨んでいる。
「このヘンタイ!」
「?」
僕に怒りを向けているらしい。
どうして……って、まさか!
「え、ええ!」
さっきの柔らかな感触。
もしかして、今のはあの人の……!?
「その感触を思い出す手をやめなさい!」
「は、はいっ! ごめんなさい!」
真っ赤な髪の人は、ギラリと怖い目を向けてくる。
その怒りの表情のまま、ズンズンと歩いて来るのを──明るい茶髪ショートヘアのお姉さんが止めた。
「落ち着きなって、ルージュ。この子もわざとじゃないよ」
優しく
この人も“ミサイルランチャー”の人とは違う。
もしかして僕を
それでも、真っ赤な髪の人は反抗を続けた。
「セリカ! アタシは
「まあまあ、視界も悪かったんだし」
そんな明るい茶髪ショートの人は、微笑みながらこちらに寄ってくる。
まるで弟でも見るかのような表情だ。
「君、大丈夫?」
「……! は、はいっ!」
屈んだからか、胸元がチラリと見える。
それに目を逸らしつつ、しどろもどろに答えた。
「ワタシは第三小隊隊長セリカ。あっちでぷんぷんしてるのは、同じ隊員のルージュだよ」
「ふーんだ」
セリカさんが目を向けるも、ルージュさんはぷいっと顔を逸らした。
「うちのルージュがごめんねぇ」
「いえ……って、うわっ!?」
優しく話しかけてくれたからと思ったら、そのままぐいっと頭を引き寄せられる。
「痛かったねぇ。お姉さんがよしよししてあげるから」
「~~~っ!」
急な出来事に頭がパニックになる。
柔らかいものに包まれて苦しい!
「じゃあ君のことも教えてくれる?」
「は、はい」
「
「僕は……あれ?」
だけど、その瞬間に違和感に気づく。
今までのことを全く思い出せないんだ。
「す、すみません。あれ、どうして」
「もしかして記憶喪失かな。自分の名前は分かる?」
「名前は……アルス、だと思います」
なんとなくしっくりくる名前を答えた。
「アルス君だね。見た感じ、お姉さんより少し年下の十六歳前後かな。他の二人は同年代ぐらいかも。呼び方も好きにしていいからね」
「ちょっと! ヘンタイに勝手に許可しないでよ!」
「ほら、いいって」
「あ、あはは……」
そんな中、二人ではない新たな声が聞こえる。
「みんな、遊んでる暇はない」
「……!」
少し低く、冷静な声色だ。
声の主は、サラサラの黒髪ストレートの人。
表情はあまりなく、クールそうに見える。
間違いない、僕に“ミサイルランチャー”を撃とうとした人だ。
「魔物が来た」
「「……!」」
黒髪の人の声に応じて、セリカさん、ルージュは即座に立ち上がる。
二人も目の色を変え、今までとはまるで雰囲気が違う。
「アルス君はワタシたちが守るよ」
「は、はい……うぐっ」
だけど、ここにきて頭痛がする。
まるで“魔物”という単語に何か引っかかるかのように。
そうしてすぐ、魔物が僕たちの前に現れた。
「グオオオオオオオオオ!!」
「ひいっ!?」
思わず見上げるような大きさの、黒い獣。
まるで化け物だ。
しかも、その後ろにも小さめの魔物がまだまだ控えている。
「……っ!」
それに、妙に心が
僕は“魔物”を知っているのか?
そんな中、ミサイルの人は先頭に立ってこちらを振り向く。
「その子を守ってて。私がやる」
「任せたよ、ミリア」
「うん。私のミサイルで抑える」
名前はミリアというそうだ。
ミリアの両肩からは、またも四角形の兵器のようなものが現れる。
さっき僕に発射しようとしたやつだ。
あれが“ミサイルランチャー”なんだろう。
「ちゅどーん」
「「「グオオオオオ!」」」
発射された多数の弾は、ひゅるひゅると
前の魔物から次々と倒れていく。
「す、すごい……!」
「ミリアの『スキル』は一対多数に向いてるからね。うちの切り込み隊長だよ」
「スキル?」
思わず聞き返すと、セリカさんが微笑みながら答えてくれる。
「人が持つ“固有の能力”のことだよ。生まれ持つ場合もあれば、ある日ふいに覚醒する場合もある。でもそれは──……!」
「うわっ!?」
だけど、話の途中でセリカさんに抱えられて横へ回避する。
「これは呑気に話してる場合じゃないかなぁ」
「え? ……っ!」
セリカさんと同じ後方へ視線を向ける。
そこにいたのは、さらなる魔物たち。
「「「グオオオオオオ!!」」」
その多さには、セリカさんも少し焦った笑みを浮かべる。
予想以上の数だったのかもしれない。
「って、セリカさん、その傷……!」
「大丈夫。こんなのかすり傷だよ」
「でも!」
セリカさんの片腹から血が流れている。
とてもかすり傷なんかじゃない。
回避のタイミングで僕を庇ったからか、後方から遠方の不意打ちをもらってしまったみたいだ。
「君は守ってみせるから」
「──!」
その表情を見れば分かる。
痛みを耐えながらなお、僕を守ろうとしてくれているんだ。
「……っ」
これは僕のせいだ。
女の子にチヤホヤされて浮かれたのも。
ミリアの強さに油断したのも。
それでセリカさんが傷を負ったのも
僕も何か力になれたら……!
「──!」
そう願った瞬間、体から
「アルス君! その光は!?」
「わ、わかりません!」
「って、ワタシの傷が治ってる……?」
その光は近くにいたセリカさんに波及し、彼女を包み込む。
かと思えば、セリカさんの腹の傷を
さらには──
「お姉さん、力が湧いてくるみたい」
手をぐっぱっと確かめるようにしているセリカさん。
この現象に、僕の方を見て声を上げた。
「アルス君、これは君のスキルなの?」
「ぼ、僕も驚いてます……」
「そんな……」
記憶を喪失する前に会得したのだろうか。
でも、この重要な場面で役に立てるなら!
──と思ったが、セリカさんからは予想の斜め上の言葉が飛び出す。
「男の子なのに!」
「え?」
それってどういう意味ですか?
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新作です!
第1話は長めですが、第2話以降はもう少し短めで更新できたらと思います!
続きが気になりましたら、ぜひフォローよろしくお願いします!
☆出てきた女の子
セリカ:明るい茶色ショートヘアのお姉さん
ルージュ:ぷんぷんした赤髪ツインテール
ミリア:クールな黒髪ストレート
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