前髪を切った私と、恋に落ちて欲しい
那須茄子
前髪
不覚にも。
隣の冴えない男の子が、ふと見せる真剣な眼差しにときめいちゃって。
朝の「おはよう」ぐらいの挨拶でも、ビクッとドッくんが重なる鼓動のアップテンポに襲われる。
気持ちなんだか、激しめの焦燥に駆られ、頭の中がふわふわ状態。
自己防衛発動!
目にかかる前髪が邪魔して、彼を見えなくする。多分これは、『一目惚れ注意』の意思表示。
あーあ、これで良いのかな?
あーあ、どうする?
あーあ、やっぱ好きなんでしょ。
あーあ、このままじゃ手遅れ。
あーあ、彼にもその内彼女ができちゃうんじゃないかな?
そんなの堪えらんない。
さぁ、────思いきって前髪を切る。
少しばかりの勇気と決意した恋を持って。
目と目が合うように、ちょっとドキドキ緊張しながら彼に。
「....どう? 髪切ったんだ..」と恐る恐る。
そこに居たのは、いつもとは違う彼。
赤く染まる頬が、切り開けた視界の中でよく見える。
この一瞬は逃せない。
「前髪を切った私と、恋に落ちて欲しい」
私は言った。
これまで抱えていたその言葉を、優しく送り出すように。
前髪を切った私と、恋に落ちて欲しい 那須茄子 @gggggggggg900
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます