第6話 夢世界農地Z
辿り着いた場所。
始めてくる夢世界。
なぜここに導かれたのか。
それは俺にも分からない。
壮大な土地。
肥沃な土。
畑仕事をしている大きな巨漢の男性。
右手にはこれを見よとばかりに巨大で赤く丸まったトマトが実っていた。
俺は地面に足をついた。
実体化が始まり。
体はこの世界に馴染んだ。
頭の中に流れるこの世界の舞台。
【農地Z】
という名前。
なぜZなのか理解不能だが。
巨漢の男性は即座に背中からクワを抜いた。
俺に警戒の意思表明をしている。
巨漢の男性は見た所どこにでもいる人間種族のようだ。
しかしながらどことなく巨人にも見えなくはない。
俺は手を上げて抵抗しないそぶりと敵対しない意思表明を示した。
「OFALAEOAE」
はっきり言って何を言っているか分からない。
なので、別な世界で習得していたスキル【翻訳機能】を発動させていた。
「お前はどこから来た。この世界にはわししか住んでおらんはずなのに」
どうやらこの世界はこの巨漢だけの世界のようだ。
「俺は別な世界から来た。俺は夢を介して別な世界に渡れる。今俺の故郷では領地開拓をしていて、考えて見れば農作物の事など理解していなかったからあなたに教えを請いたい」
「ほう、わしに農作業の事を教えてほしいと、わしは基本クワの振り方とスキルくらいでしか応用はしておらん、そのスキルを学ぶか?」
【子弟システムが起動します】
「了解した」
【トメイガーと子弟の絆を結びました】
【農地Zが新しくいつでも来れる異世界になりました】
【おめでとうございます。クワが進呈されます】
まるでゲームの世界のナレーションの様な物が流れてくる。
こうやって異世界を攻略していく。
この声を夢の声と名付けているが話した事は無い、まず言葉の受け答えが出来ない。
あちらが勝手に話すだけ、いつか夢の声と話せる事を夢見ている。
目の前に浮かぶのは1本のクワ。
ただのクワそのものなのだが。普通とは何かが違っていた。
まずこれをコレクションブックに入れる。
スキル【複製】を発動させ、クワを2個にする。
1個をコレクションブックに入れたままにする。
【伝説のクワをコレクションしました】
【クワの熟練度がMaxになりました】
「ほう、クワをそこまで扱えそうに構えるのはお主が初めてじゃ」
「まぁ、俺がここに来たのが初めてなんだろうけど」
「さて、トマトを育てる基本だが、気合と怒声じゃ」
「はい」
「クワを振り上げて、振り落とす。ただそれだけじゃ、種をまいたら後は勝手に生えてくる。この土地は肥沃だ。肥沃な土さえあれば後は耕し方1つじゃ、後はミズマキじゃ、水は鮮度が命、綺麗な水程、トマトや作物は実ってくれる。さて、ここまでは忘れていないな?」
トメイガーは腕組みしながらこちらを見ている。
俺はこくりと頷いた。
「畑作業の基本は愛じゃ、作物に愛を与える。そんな事誰が言ったんじゃ、技術じゃ、命は技術と肥沃な土とクワの振り方じゃ、後は季節にも作用されるが。このトマトは最高に品種改良されておる、さて、お主の第一ステップはトマトを制する事じゃ」
「はい!」
「あそこにいるトマト大王を倒してみろ」
「は、はいいいい」
作物が沢山実っているが、そこには明らかに巨大なトマトのモンスターがおり。
俺は冷や汗を掻きながら、走り始めていた。
地面を蹴り上げてジャンプすると。
クワを叩き付けるだけ。
だが熟練度がMaxな為にトマト大王は一撃で粉砕され、トマトの果汁が全身にぶち当てられた。
俺は全身がべとべとになっていようとも。
【トマト大王を倒しました。最高トマトの種を習得しました】
あとはスキル【複製】を自動化して、最高トマトの種を自動複製するというチート技を使う。
それを発動させた状態で、俺はトメイガーの話を聞いていた。
彼の話は最初から最後まで為になる話であったが。
トメイガーは寝る間も惜しんで畑作業をしていた。
それが彼の生きざまなのだろうと思った。
「トメイガーはなぜそこまで畑作業をするんだい?」
「かつて友達がいた。友達は死んだそれだけだ」
「よく分からないな」
「この世界は元々多くの人達がいた。だけど皆飢えて死んでしまった。わしはいつもトマトばかりを食べていた。わしだけがトマトを食べる耐性があった。この世界の住民はトマトを食べられない、いや野菜を食べられないんだ。彼等は肉を食い動物がいなくなると死んでいった」
「なんだか悲しいな」
「そうでもないさ、友達も肉しか食えなかった。それでも野菜を食おうと頑張った。だがその命は枯れ果て、その命は肥沃な土となり、トマト大王の栄養となった。トマト大王は何度だって蘇るさ。さぁ、お前は元の世界に帰るんだな、領地とやらで最高トマトの作物を育てると良い」
「はい、トメイガー」
「次はエダマメについて教えよう、隣に畑があるんだ。気が向いたらこい」
「はい、次はエダマメですね、エダマメ大王なんて言うんじゃないんでしょうね」
「はは、そんな簡単なタイトルな訳がないだろう?」
「それもそうですね」
その日、色々な事を学んだ気がした。
そうして「がふぅ」「ぐふぅ」
ほっぺたに激痛が走る。
「どうやらお迎えが来たようです」
「達者でな、また来るんだろうけど、わしは待っておるぞ」
次の瞬間、世界は輝いて、リサイクルドリームショップの事務室で俺は、胸倉を掴まれてフウに往復ビンタを食らっていた。
「って起きてるから」
「よろしい」
「ゴリラかよ」
「まだやる?」
「すみません」
恐ろしい女だと思った。
「もう3日が経ったのか、さてと、開店準備と行きますか」
「窓の外見たほうが良いわよ」
俺は2階から窓の外を見ていた。
ジェラルド将軍が一生懸命整列させていた。
長蛇の列が領地の門まで伸びていた。
大勢の冒険者がおり、名のある人達もいる。
中には勇者と呼ばれる人達もなぜか魔王もいるわけで。
ここで戦争をおっぱじめられたら俺が大変だなーと思う感じだった。
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