第4話 兄としての想い

 今日は師匠に呼ばれて守護者たちが集められた。っと言っても、情報集めに行った火卯我ヒュウガさんと、遠くにいる足の遅い水義スイギさんがいないので、いつものメンバーだ。

 なんでも今日は、竜王が孵る日とかで、俺たちは今ハクギの森にある、開けた丘にいる。

 やることもなかったので、水辺の近くにある一本の白い木の下で昼寝をすることにした。鷹のファルも木の枝で羽繕いをしている。

 地竜チリュウと弟のギルスは、近くで魔法の勉強中・・・うるさい、これじゃ昼寝ができない。

 ギルのやつ、相変わらず教えるの下手だな、「水のように魔力を使え!」ってなんだよ。

 ギルスは、黒豹族で俺は魔狼族だ、種族の違いから分かるように俺らは、義兄弟だ。

 あいつの母親は、物心がつく前に亡くなった。父親は、小さいころに行方不明になったとか・・・。

 黒豹族は群れるのを嫌う種族で、同族の知り合いも親戚もいないギルスは、火卯我ヒュウガさんに親父達のとこに連れてこられた。

 来たばかりのギルは、新しい環境にいるせいか、酷く怯えていたのを今でも覚えている。俺は一生懸命にあいつのそばにいてやった。何をするにもあいつと一緒だった。

 そのおかげか、すぐに打ち解けて、喋るようになって、次第に笑うようになった。俺も弟ができてとても楽しかった。

 俺たちはかなり仲良しだった。本当の兄弟のように、だが長くは続かなかった。

 ある出来事から俺たちの関係は崩れた。そう!ギルスは、師匠に守護者にならないかと、誘われた。

 そばにいた親父は、「俺の子は、渡さん!」っと言ってギルスを庇う。俺も弟が居なくなるのが嫌で、必死にギルスにしがみついてた。

 母さんは、「名誉なことじゃないの!ギルちゃん、氷帝ヒョウテイ様とともにおいき?」っと言う。

 ここで夫婦喧嘩が始まるかと思いきや、母さんに頭があがらない親父だった。

 すごく不安そうな弟を守るため、「ギルが行くなら、僕も行く!」と言って前に立った。

 それを見たギルスは、安心したのか、「ウォルフィが一緒なら!」っと嬉しそうに言う。

 俺たちが師匠のもとで修行を開始してからしばらくは、仲良くしていたのだが、少しづつ競い合うようになり、気づけばライバルになっていて、喧嘩の日々が続いてる。

 地竜チリュウの見た目はアルマジロ族っぽいけど、2足歩行?土魔法が得意みたいだけど、穴掘りが苦手のようだ。

 それに「狭いから、やだ」っと言って地面に潜ることもほとんどない、本当にアルマジロ族なのか?

 どうやら、二人とも休憩しに木の下まできた。はぁ、お昼寝おしまいか?寝れてないけどさ。

 地竜チリュウ「兄貴と雷尾ライオさん、どっちが強いの?」

 っあ、喧嘩の予感、このバカマジロが!それ禁句ワードだぞ!

 闇胡クラウ「は?俺に決まっているだろうが?」

 やっぱり喧嘩になった。

 ギルと言い合っていると、師匠が珍しく慌てだした。どうやら生まれそうだが、それどころじゃない!

 喧嘩の原因を作った張本人は、逃げるように「はーい」って言って走り出したが、すぐコケタ。この天然おっちょこちょいが。

 心配したギルスが喧嘩をやめて助けに行く。ほっとけばいいものを、相変わらず面倒見が良いやつだ。さすがは、我が弟だ!

 色々やっていると、名づけが終わったみたいだ。勝手に竜王に名前付けてもいいものなのか?

 そう思って師匠の方を見ると、開かないはずの、左目が開いてた。

 青く光っている。これがマテリアルコアの力なのか!師匠、左目が開いていることに気づいていないようだ。視力が戻ったわけではないようだな。

 師匠は、俺たちにもマテリアルコアの力渡してくれないかと、竜王に言う。

 竜王ギアは「ピッピー」と返事をして、この場にいる全員にマテリアルコアを渡す。生まれたばかりなのに言葉が通じるのか!?竜族は、賢いって聞くが、ここまでとは。まぁ、竜族は昔の悪魔たちとの大戦争でほぼ絶滅し、今では希少種とされて、ほとんどの者は、見ることすらできず生涯を終える。

 なので、比較対象がないが、それでも生まれてすぐは、すごいと思う。

 全員にコアを渡し終わると、ギアと地竜チリュウは、遊び始めた。これでようやく昼寝ができる。

 しばらくすると、師匠がギアをユグドラさんのとこに連れていくっていう。日も暮れてきたので、俺たちも帰る時間だ。

 師匠とギアに別れを告げて、俺は弟たちに「帰るぞ」っと言う。ギルから「仕切るな!」っと嫌味を言われるが、弟と並んで帰る夕日がキレイなので、聞かなかったことにする。

 帰り道で地竜チリュウとギルが話しているのを横目で見ながら聞く。


 地竜チリュウ「そいえば兄貴、この前火卯我ヒュウガさんと話していたけど、お父さんの話?」

 闇胡クラウ「ああ」

 地竜チリュウ「どうだった?何か手がかり見つけたの?」

 闇胡クラウ「いや、見つからないってさ・・・・」

 地竜チリュウ「そっかぁ・・・」

 闇胡クラウ火卯我ヒュウガさんほどの情報屋が手掛かりなし・・・もう死んでいるのかもしれないな、これで俺も天涯孤独の身だよ」

 地竜チリュウ「・・ごm」

 泣きそうになりながら、言うギルス、謝ろうとする地竜チリュウに割り込む

 雷尾ライオ「バカかお前?」

 闇胡クラウ「なんだと?!」

 雷尾ライオ「どこが「天涯孤独」だ!俺ら家族だろうが、頼れる親父に、甘えられる母さんに俺もいる!、弟分の地竜チリュウだっている、ギルスお前は、俺の大切な弟だ!」

 闇胡クラウ「・・・・兄貴面するな」

 ギルが小さな声でそう言って前を歩き始めた。

 地竜チリュウは、困ったような顔で俺を見ている。やれやれ、手のかかる弟だ、いつか必ず「お兄ちゃん」っと言わせてやる!

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