第4話

 カロンが戻ってこないまま時間が流れ、流石に少し暇と感じた俺は、なんとなく自分が眠っていたベッド周りの片付けから始めてみた。

 色んな資料が床に散らばっているけど、敢えてそこに置いているって可能性も考慮して触らず、本当にシーツを整える程度だ。

 しかし、その程度は数分もあれば出来てしまえる訳で、再び暇になった。

 物さえ触らなければ部屋を見て回っても良いだろう。と、机に置かれていた水晶を覗き込んでみれば勇者の卵として合格したクラスメート達が木刀を振り回したり、杖を振り回したりと実践的な訓練を受けている様子が映し出されていた。

 ある程度ちゃんと戦えるようになるまで訓練はされるのか、ポンと異世界に放り込まれることはないようで安心したよ。

 なんといっても、俺はいきなりポンと殺されたからな。

 今はこうしてほぼ全員が同じ場所にいるから水晶での監視もしやすいんだろうけど、これ、全員が別々の異世界に勇者として送り込まれると、行動の把握ってかなり難しいんじゃないか?

 じゃあ俺が1人……2人位受け持つよーとか提案してみようかな?

 まぁ、なにをどんなふうに見張れば良いのか分からないし、どういった行動が貢献度になるのかも分からないんだけど、なにか表?みたいなにしてくれたら計算できるし!

 と、提案しようにもカロンはまだ戻ってこないしなぁ……なにしてんだろう?

 「お待たせしました」

 カロンが戻って来た時、俺は暇さを持て余し、落ちている資料を手に取らずに寝転びながら読んでいた。

 それによると、俺達のクラスは適当に選ばれた訳ではなくちゃんとした根拠の元で召喚されていることが分かった。

 なんでも、俺達の教室から凄まじい力を秘めた剣士と魔術師と賢者の気配がしたそうなのだ。

 で、それぞれが何百年かに1人出るかどうかって位の貴重な存在らしいんだけど、詳しく誰なのかまでは分からなかったからクラスごと召喚した。と。

 真相が分かった所で、俺が単なる巻き添えを食らって召喚されたゴミだって事実は変わらない。

 「おかえりー」

 「はい。許可を取ってきましたので、お好きなだけこの部屋にいていただいて構いませんよ。そこでお手伝いと言うことですが……26名の管理対象者の中から2名の管理を頼みたいのですが……」

 そう言いながら手渡させた少し小さめの水晶には、2人の男子生徒が映し出されていた。

 こいつらは……俺と同じくゴミ認定を受けた奴らだよな?

 ん?

 「こいつらってもう異世界にいったのか?」

 他のクラスメートと違って訓練を受けている様子もないし、景色が広い。

 「行ったというより、なんでしょう……創世、でしょうか」

 うん?

 「戦う能力がないこいつらに、なにさせようってんだ?」

 勝手に死んで勝手に転生しろって?

 「このお二人は灰色という珍しい属性をお持ちで、その灰色に合う異世界がないために転生されることになったのですが、ないなら作れと……」

 それで自分達に合う異世界を自分達で作る所から始めたってのか?

 ふぅん……面白い。

 この2人の記録を取って、この2人が見事灰色の異世界を作り出せたら、きっと俺だって満足するだろう。

 「分かった。この2人は俺に任せとけ!」

 今からバッシバシ記録を書き残してやるからな!

 溜息1回すら逃さねぇ!

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