第23話 託された想い〈ルアノ側──正体不明者の襲撃〉

 ──数時間前、地底域アンダーグラウンド


「来てやったぞ! 4人共!」


 その声は勢いよく入ってきた。

 リクト、ミレイ、レイオ、そして私を含めた4人に向けられていた。

 その声に驚き、ミレイの子ハヤセと、私の娘キキノがぐずり始めた。その横では、1も泣き出しそう……。

 それに怒ったレイオとリクトは、勢いよく来た第一王女イミリアに文句を言っていた。


「てめー、イミリア! せっかく寝ついたのにまた泣き始めたじゃねーか!」

「イミリア……君はもう少し周りを見ろ……。仮にもこれからグラヴィスを継ぐんだろ?」


 そう言われ、イミリアは申し訳なさそうに謝ってきた。私とミレイに……


「悪かったわよ……。ルアノ、ミレイ……」

「なんでミレイとルアノだけなんだよ!」

「僕たちも迷惑をかけられてるんだが……」


 その言葉にイミリアはキレていた。


「はぁぁあ〜!!!? 聞いてるわよ! あんたら色々理由をつけてはハヤセとキキノ、セイルの面倒を2人に任せっきりしてるんでしょ!?」


「「うッ…………!?」」


 これに私もミレイも激しく同意していた。

 イミリアに2人のことは話してある。


「まるで自分たちが寝かしつけてるみたいなこと言わないでよ!」


「そうね〜……お父さん何もしてくれないもんねぇ」

 ミレイはハヤセをあやしながら言っている。

 私もキキノとセイルをあやしながら続けてみた。


 これに対し、2人は返す言葉を持ち合わせていなかった。

 まぁ、当然ね……。 

 この話を逸らす様にレイオは言っていた。


「と、ところでなんの用だよ……?」

 イミリアは目を細めながら2人を見ると「──まぁいいわ」と言い続けていた。


「あなた達はルシアとカンネを送り届けた後も天世の調査をしてたでしょ? で、狙われるかも知れないから地底域ここに身を隠す様に言ったけど、やっぱりここ最近、グラヴィス内で正体不明の何者かが……恐らく天世の刺客だと思うけど、あなた達のこと嗅ぎ回ってるらしいのよ……。ルシアは一旦エルフの街に送り届けてるから大丈夫。まぁ今はグラヴィスの近くにいるみたいだけどね。カンネは私の保護下にあるから問題ないわ……。それに、あなた達は彼女たちが狙われない様に2年で2人と別れてたからそこまでは手が伸びてない様だけどね……あなた達の判断は正解よ」


 私たちはイミリアの話しに『やはり』と言う感じがした。2人送った後、私たちは天世を詳しく調べるために再度各地に足を向け、細かいところまで調べていた。

 その度に何者かが襲ってきた。

 でも私たちは弱くはない。

 ある程度の者達には負けはしなかった。

 襲われる度にレイオとリクトは「真実を知らないと!」と言いながら調査の続行をしていた。


 すると、どんどんと色んなことが分かり始めた。 

 今、天種と名乗っている者たちの大半は元々地種アンシュで、私の一族クランである悪夢の一族ナイトメアンの力を利用したということが分かった。どう利用したかまでは辿り着けなかった。


「だから、あなた達ば絶対地上に出たらダメよ! 間違いなく殺されるわよ! ここ地底域アンダーグラウンドは地上と隔離されてるし、なぜかここには来てないようだから」


 それを聞いたレイオとリクトは口を開いた。


「それはリスクを負いたくないんだよ……」

「レイオの言う通りだ。僕たちが調べたことで分かったことがある。ここ地底域アンダーグラウンドは元天種が隔離されている。そこに、その立場を逆転させた者達が来たらどうなると思う? この地底域アンダーグラウンドの全元天種を相手することになる。そんなリスクは冒したくないんだろう」


 その事実に驚きつつもイミリアは口元に手を添え考える様に続けていた。


「だったら尚更、ここから出るべきではないわね。まぁ言いたいことはそれだけよ!」

「その為にわざわざここまで来たのかよ?」

「本当に君は王女なのだからもっと自分の身の安全も考えろ……まぁ忠告はありがたいがな……」


 レイオとリクトが言うと、イミリアは腰に手を当て胸を張り言った。


「親友が危ないかもしれないんだから来るのは当然よ! 私は大切な親友を失いたくないの!」


 それに答えたのはようやくハヤセを寝つかせたミレイだった。私のキキノとセイルも落ち着いている。


「ありがとうね、イミリア。あなたが私たちの親友で本当によかったわ」

 私もミレイに続き笑顔で同じ事を言った。

 少し照れた様子を見せ返してきた。


「まぁもし地上に来たいのなら、私専用の王城地下室があるからそこなら大丈夫よ! 私の能力とガイアの力を混ぜ合わせて恐ろしく頑丈に造ってあるから! それに、私の恵印がないと絶対に入れないしね!」


 自信満々に言っている。

 でも、イミリアはガイア領域に連なる血族だからその能力の大きさは絶大なものがある。

 まぁ、防御特化型だけど。


「じゃあまた来るわね!」

 

 そう言いながら部屋を出ようとした時!

 連絡の騎士が慌てて入ってきた!

 

「た、大変です! グラヴィスが襲われています!」

 

 その大声に、また子供たちがぐずり始めてしまった。でも、今度は緊急を要した展開にそれを咎める者はいなかった

 

「どういうこと!? なんでグラヴィスが!?」

 イミリアは驚きの声を上げていた。

 それにすぐに答え、騎士は告げた。


「イミリア様が以前から警戒しておられた正体不明者どもが、王都内で能力を解放し! 街を破壊して回っています! 騎士団総出で対応しておりますが奴ら、とんでもないバケモノです! 歯が立ちません!! 1千名程いた騎士はもう半数以下です……」


「──!? 相手は何人なの!」

 騎士は言葉に詰まりながら告げてきた。


「そ、それが……男女3名です……」


「──たった3名……!? うそでしょ!?」


「──事実です……」


 そのやり取りを聞かされたレイオとリクトはお互い顔を見合わせると頷き、イミリアに告げた。


「イミリア! 俺たちも行く!」


「ダメよ! きっとこれはあなたたちを誘き出す罠よ! 死にに行くようなものよ! 産まれたばかりの子どもがいるんだから! ここに隠れてなさい! 私が……どうにかするから!」


「どうにかするとはどうするんだ? これが罠だと言うのなら原因は僕たちだ。イミリアだけに負担は強いれない!」


 それでも頑なに『来るな!』と言い、騎士を見張りに任せイミリアは地上へと戻って行った。

 でも、私を含め、レイオ、リクト、ミレイはイミリアを見捨てる判断はしない。


「リクト! 行くぞ! ミレイとルアノはここに居ろ……子供を頼む」

「レイオの言う通りだ。君たちはここに居ろ……」


 2人はそう言うと、私たちと子どもに目を向けた。

 その目には覚悟が見てとれた。

 そして見張りの騎士を気絶させると地上へと向かい始めた。だけど、それに続くようにミレイも向かい始めた。


「ミレイ! 来るな! お前はハヤセを守っていてくれ……」

 そう、静止をかけたけどミレイは断固とした意思で2人に着いていくことを決めていた。


「──2人だけじゃダメでしょ……。回復役は必要でしょ?」


「──ハヤセはどうするんだよ! お前まで居なくなったら……」


 ミレイはそう言われると、寂しそうな目をハヤセに向けながら、私に言ってきた。


「ルアノ……あなたはここにいて」


「なんで私だけなの!? あなた達が行くのなら私も……!」

 私がそう言うと、ミレイは続けて言った。


「まだ、この地底域アンダーグラウンドに身を潜め、悪夢の一族ナイトメアンが少し残ってるでしょ? あなたの一族クランが……。だから、残るのはあなたがいいの……同じ一族クランの者達だったら子供たちも保護してもらえるでしょ?」


「でも……」


「お願い……みんないなくなる訳にはいかないの。それに、あなたは私たちのメンバーの中で、唯一、空間に干渉できる能力を持つんだから……いざとなったら、その能力でお願い……」

 

 そう言われると断れない。


「──分かった………でも、死んで欲しくない……」



「死なないとは言えない……。3人でそこまでの能力を持つ者達なんて、恐らく天世でもかなり上の者達だと思う……でも、頑張ってみるから……」


 そう言い残すと3人は地上へと向かった。

 私は3人の子供を連れ、一族クランの集落へと向かうことになった。



 


 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る