第21話 託された想い──〈現代〜過去〉

「ハヤセも知っての通り、能力は開花する。でも、これはガイアからのを受けていない者よ」


 俺はルシアさんの言っている意味がわからなかった。能力開花が起こっているにも関わらず、を受けていないとは……

 それを言うのなら、友人達は、6歳になるまでには能力の開花が起こった……

 ──という事はという話になる。


「何言ってんだよルシアさん……。シマもチカホもカレンも能力開花は5歳くらいには起こってる。これは承認を受けていないってことなのかよ……?」

「言う通りよ……。承認を受けていないから突然なのよ。ハヤセは何歳で能力が開花したか覚えてる?」


 そう言われたが、俺は忘れるはずもない。

 周りの子供よりも幼馴染よりもかなり遅かった。


「……俺はあいつらよりも、5年くらいに遅くて、10歳だったよ。だから、才能がないって思って……なんて言うかやる気をなくしたんだよ……」


「……そうなのよ、10歳なの。は等しくね。私が幼くして能力が使えたのはの末裔だからよ。私達はね、突然開花じゃなくて、能力が使えるの」


 その言葉に耳を疑った。

 生まれた時から能力を使えるルシアさんにも驚いたが、今まで自分が、何かの一族クランだと、聞いたことはなかったし、聞こうともしなかった。

 

「じゃあ、俺は何かの一族クランの血を受け継いでるのかよ……?」


「そうね……。ハヤセのお父さんのレイオさんは祈りの一族プレアンで、母親のミレイさんは《ガイア領域》の血族……そして、キキノちゃんの母親のルアノさんは悪夢の一族ナイトメアン、父親のリクトさんは賢者の一族ワイザラン……4人共、天種テンシュに属する一族クランの血を引く者達よ……さらに言えば、祈り一族プレアン悪夢の一族ナイトメアンの唯一の生き残りでもあるわ……」

 

 俺たちがルシアさんが言った、承認を受けた一族クランの唯一の生き残りと聞かされても全く実感がわかない。

 生きてきた中でそんな事を考えてなかったからだ。

 だけど、ルシアさんは言った。


「ハヤセ……。あなた、皆んなより能力開花が遅かったけど、他の人より?」


 ルシアさんの言う通りだ。

 シマと比べても、チカホと比べても、カレンと比べても、それに先生と比べても、自分で言うのもおかしいが、俺の能力は頭抜けていたと思う。


 その表情を読み取ったのか、ルシアさんは頷き言った。


「──それがということなのよ。それ以外は、天世が時間をかけて創り出した《偽承認》よ……。どうやって広げたかはハッキリとは分からないけど、恐らく、天世が管轄している《ゲート》と名の付く天牢が関わっていると思うし、孤児を育てるのも、それと関わってるのだと……カンネに聞けばもしかしたら分かるかも知らないけどと私は思ってる……」


「じゃあキキノを天牢に閉じ込めていたのもそれが関わってんのかよ?」


「何らかの関わりがあるのかもしれないけど、現段階では答えを出せないわ……。ただ、確実に分かっていることは、に、16歳まで育てる必要があったってこと……」


 その答えに俺──だけでなく、その当人であるキキノはさらにその表情から、詳しく答えを求めていた。そのことに気が付いたんだと思うが、続けて答えてくれた。


「さっき言った通り、一族クランに属する者達は等しく10歳を迎えて能力が開花するわ。でも、その開花前に、その者が死んだらの能力は暴走し、能力はガイアに逆流する。これが同時に起こると、クリスタルガイアは耐えきれず消滅する……いえ、違うわね……ガイアがのよ」


 ルシアさんの言葉に当たり前の疑問が浮かんだ。

 というのはまるで、様な言い方に聞こえる。


「もしかして、クリスタルガイアは意思を持って……いるのか、よ……?」


「──ええ、持っているわ……。その意思で、〈恵印〉を与えた一族クランの者が殺されない様に守ってるの……。それも、10年というのが限度で、それ以上は、死なない呪いとなってしまうの……。だから10歳……。その後は自分たちで生存してもらうしかないの……。でも、10歳を過ぎてからの生存率は低くなる。敵対する者たちは、強い力を持つ前に消そうと考えるから……」


 その答えはさらに疑問を浮かべさせていた。 


 ルシアさんが言っていることは真実なのだと思うが、それではキキノがまで生かされる理由がわからない。


 殺すのなら、守りから外れる10歳の時に殺せばいいことだからだ。わざわざ6年余分に取る意味がわからない。


「だったらなんで、キキノは16歳まで、育てないといけなかったんだよ……?」

 ルシアさんは寂しい表情を浮かべながら答えてくれた。


「それはね、ルアノさんがキキノちゃんを、能力を使ってかけたのよ。限界でプラス6年、キキノちゃんを殺すとか、死なせる様なことがあれば、故意に能力暴走と、逆流を起こしガイアが消滅する様に……。その時のルアノさんの表情は忘れられない……グラヴィスの王城の治癒室で死の間際に───」



 黯然あんぜんたる表情で、ゆっくりと、俺たち両親の死に際について───



「───今から16年前、ハヤセが生まれて間なしだったかな……レイオさんと、ミレイさん……そしてリクトさん、ルアノさんの知らせを、王城から来たイミリアの使いから聞いたのは────」


 そう言うと、ルシアさんは再び過去を話し始めてくれた……。



───── ◇──── ◇ ──── ◇ ─────


 読んで頂きありがとうございます🎶

 最初に考えていた天牢〈ヘルゲート〉の外観を描いています。本編で表現したものとは多少異なります。

 温かい目で見ていただけたら嬉しいです✨

 近況ノートに移動します。

        ↓

 https://kakuyomu.jp/users/Hakuairu/news/16818093076116338493

 

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