付き合ってから1日目 愛への欲望
あー寝た寝た。現在時刻は午前10時32分。寝すぎて髪の毛がえらいことになってるのを感じる。
毛先を探すように頭の後ろへと手をのばす。あーこりゃすごい立ってるわ。もうすごいねビンビンよ!
なんか下ネタみたいだなと一人ツッコミながら前髪も立たせる。よっと、これでスーパーサイヤ人ってな。ちなみに2のほうね。なんだろうなぁーあのカミナリ出てるあたりや1から髪型がちょっとしか変わってない感じが好きなんよね。わかるやついるかね?
くだんね
なにやってんだ。
はぁー寂し。
ホントなら今頃駅前とかで待ち合わせてそこらへんのカフェとか入ってキャッキャウフフしてさーあ、恋愛映画とか見てキャッキャウフフしてさーあ。こんな時間まで惰眠貪ってるはずじゃないんだよなー。
取り敢えず起きるか。
よっと言いながらベットから降りる。そして、そのまま階段を下り一階のリビングに行く。テーブルには料理が並んでいる。そのなかにはメモ用紙も一緒に置かれていた。
『休出につきいません。朝ご飯は作ったんで昼はテキトーに食べてね♥️
愛すべき母より』
愛すべき母…ね。
遅れたがうちには父さんはいない。何時のことだったっけか、毎日喧嘩が我が家では行われていたとさ。
やれお前の帰りが遅いからとか、こっちだって疲れてるからしょうがない、とかそんなしょうもなそうな言いあいだった気がする。
当時俺は7才くらいの小学2年生だ。何かを言えるような立場でもなく。ただ黙って眼前で行われるそれを見ていた。
そんなある日家に父さんは帰って来なくなった。
ダイニングテーブルの上には一枚の紙。それを見つめぼーっとしてる母さんの姿。当時の俺はそのとき家族がどうなったのか理解していなかったが、その光景は何だか印象的だった。
最近、飲み会から帰ってきて酔った母さんが言ってたが、父さんはどうやら女を他所で作ってそっちのほうに行ったとか。
それを聞いて俺は特に父さんについて何か思うことはなかった。前は何で父さんが帰って来なくなったかよく意味がわかんなかったし、今はもう怒るにしては時間が経ちすぎた。
ただ、それを言う母さんは未だに辛そうだった。
俺からしてみれば単なるオッサンでも、母さんからしれみれば掛け替えない何かだったんだろうな。
それでも二人が別れたのは、きっとどっかで変に疑ってしまったからだろう。友人関係にしても恋愛関係にしても、規模を大きくすれば国際関係だってどうせ下らない疑いで争いが生まれて対立しいがみ合う。そんなループだ。
だから二人が離ればなれになってしまったのもそんなとこだろう。多分、知らんけど。
まぁいいや、取り敢えず飯食べよ。
席について両手を合わせる。そして、目玉焼きとベーコンが乗ったパンの皿に手を伸ばし取る。
「ラップが付けられてら」
皿にはラップが付けられてた。思わず俺は少し笑ってしまった。
ラップがしてあるってことは俺が当分起きてこないってことを読まれてされてるんだろう。
あいつは惰眠を貪るだろうと考えられてると思うと何だかあれだが、逆にそれを察してラップをしてくれてることに愛情を感じて、何だかこそばゆくなって知らず頬をかく。
「でもな母さん、パンはラップすると蒸れてしめっちまうよ」
朝母さんがバタバタしている光景が浮かんでくる。
笑ってそう言いながら、ふとメモ用紙に書いてある愛すべき母という文字をもう一度見る。ちょっと癖っぽくて何故か暖かみを感じる丸み帯びたこの字はよく見る母さんの字だ。
母さんはわかっていないな。
愛すべきもなにも今の俺にはちゃんと愛せるのが母さんしかいないんだ。
こんなに濁りなく幸せな気持ちならもっと俺は欲しい。ずっと感じ続けれるくらいもっと多く大量に。だからきっと俺は誰かをちゃんと愛したいって思うし、ちゃんと愛されたいって思うんだ。疑い合うんじゃなくて純粋に愛し合う関係がほしいんだ。
そう思うと無性に彼女に会いたくなり、予定あるって言ってたし迷惑かなと思いながらもラインを送った。このときの俺の心は何故か緊張と怖さを抱いていた。迷惑かなと思ったのもあるが、そんなのじゃ筋が通らない何か大きい緊張と恐怖を。
そのあと俺はパンをしっかり完食し、ゲームに勤しんだ。ときたま通知がきてスマホを確認するのだが、来るのはよくわからん公式からのクーポンだけ。その度ブロ削してはため息の連続だ。
結局ラインが帰ってきたのは眠ようとしているときだった。俺は嬉しいようなそうでないようなもやもやした気持ちになり、結局そのまま寝たのだった。
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