Ugliness :リメイク前
@hachi3511
第1話
最初に目にしたのは綺麗な白い天井だった。
ここは何処だ…?と周りを見渡せば、沢山の機械と装置、色とりどりの薬剤。
足の先にあるのは大きなディスプレイ。
体を動かそうとしたとき、身体に繋がれてる幾つものチューブに気がついた。
なんだ、これは…?と手で掴もうとしたとき
「やぁ」と笑みを浮かべる男が視界に移り慌てて後退った。
手がベットから外れ、落ちると思ったとき後ろの誰かに体を支えられた。
「危ないですねぇ、気をつけてくださいよ。"ボス"」
"ボス"と言われて、自分のことだとすぐ理解した。
「俺は…ボス…」
そう呟けば、男は悲しそうに微笑んだ。
「"ボス"、まだ混乱しているみたいですね。可哀想に」
何があった?と男に聞けば、マフィア同士の抗争で俺は重傷を負ったらしい。
頭に強い衝撃が加わった為に記憶障害が起きているという。
どおりで、頭がこんがらがっているはずだ。と一人で納得した。
そっと後ろをみれば、俺と似た顔を持つ若い男がそこにいた。
俺か?と見間違えてしまいそうになるのは、背格好が似ているからかもしれない。
唖然としていると男が「その子のことも覚えていないんですか?」と聞くので、頷き返した。
「その子はアラクネ。貴方の顔に似ているでしょう?だから、普段は影武者役です。でも、今回の抗争ではその子を使う前に貴方が傷を負ってしまったのですが…」
男は、はぁ…と額に手をやり、悲しそうにため息をついた。
後ろの男、アラクネは「ごめんなさい…"ぼす"…」と辿々しい声で謝る。
いや、大丈夫だ。と返せば、嬉しそうに微笑んだ。
やめてくれ、俺とそっくりな顔でそんな顔をするんじゃない。
気を取り直し、ごほんと咳払いを一つ。
「それで、今どうなっている?」
そう問えば、二人は真剣な眼差しで状況を話し始めた。
そうだ、いつまでも寝てはいられない。
俺はボスなのだから。
…
あの日から数日が経ったある日のことである。
ボスとして復帰してから、俺は毎日目まぐるしい日々を過ごしていた。
ここ最近は執務に追われる日々だ。
はぁ…とため息を吐くも、疲れはとれやしなかった。
「大変そうですね」と顔を出したこの男は、クラッドという。
手伝いますよ。と俺のデスクから書類を取ると部屋の椅子に腰掛け、作業を始める。
このクラッドという男は、俺が目覚めた時から常に側に控え、何かと良くしてくれている。
今までの記憶があまりないので、正直、かなり助けられているのだ。
仕事は大丈夫なのか?と聞けば、麻薬開発の成果は上乗です。と笑顔で返された。
仕事もできる上に、部下からの人望も厚い。彼とトシも近いであろうにアラクネにはパパと呼ばれるほどに懐かれているようだし、クラッドは本当に凄いやつだ。
そう思い彼を見ると、彼は作業に集中しているようだった。俺もボスとして、歳上の男として頑張らなければならない。
二人とも作業に集中し、無言の時間が流れたある時。
ふと、俺は先程思いついた疑問をクラッドに投げかける。
「クラッド」
「なんでしょうか?」
「アラクネは、時々お前の事をパパと呼ぶな?」
「…え?あぁ…まぁ、そうですね」
「親子なのか?」
その問いにクラッドは苦笑し「まさか」と答える。
「違いますよ」という彼に「そうか」と短く返す。
まぁ、そりゃそうか…。このクラッドとあのアラクネという男は歳が同じぐらいにみえる。
普通に考えて、子供なわけがない。親子に見えるだなんて、やはり頭の打ちどころが悪かったのだろうか。
何を馬鹿な事を考えていたんだ。と頭を振る。
クラッドは長い前髪を髪にかけると、少し彼の隠れていたターコイズの瞳が見えた。
「本当に覚えていないんですね…。あの子はボスの子です」
突然の事実に、は…?と困惑の声を出すと「アタクネは、"ボス"である貴方の子ですよ」と真っ直ぐ見つめられそう言われた。
たしかに、俺の年齢ならばアラクネが子でも違和感がないだろう。
だが…
「わからんな…なぜだ?なぜ、お前を…その、パパと呼ぶ?」
「ボスがそう命令したからです。私の持論ですがね、父親というのは誰しも子供にはパパと呼んでもらいたい物なんじゃないですかね。まぁ、みんなボスの命令には忠実なんです」
「俺が?…記憶にないな…記憶障害で失われたのか…?」
男は目を伏せ「そのようですね」と呟き、作業に戻った。
その日、それ以降クラッドはあまり話をしにこなかった。何か気に障ることをいっただろうか。
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