忘れてよ

  何が書きたいのか、僕にもよくわからなかった

  ただ一つ分かっていること、それは

  この物語を

  ただ一人、君だけに

  君だけには

  読んで欲しくはないな、と



 愛されたいのに愛そうとしない。そんな歌を歌っていたのは誰だったか。


「涼真、ちょっといい?」

「ん? ああ、今行く」


 ポエムを書いていたノートを閉じて、涼真はクラスメイトの元へと駆けていく。

 その後ろから、少女がやってきてノートを開く。


「……ばか」


 愛されたい。

 何度も書き連ねられたそのノート。ページをめくる毎に少女の顔は悲痛に歪んでいく。


  愛されたいなら愛せばいい

  そうでないなら諦めるしかない


「あんたが、そう歌ってたんだよ」


  だけど諦められないから


  はやくきみにあいたい


「早く……早く忘れてよ。死者アタシのことなんて」

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