第101話 新人魔女と突然の婚約者(5)
リゼは、戸惑った様子で二人のやりとりを見ていたが、ここはエルナに任せようと思ったのか、やがて大人しく食事を再開した。そんなリゼの様子には気が付かず、エルナはリッカに優しく言葉をかける。
「婚姻されていれば、リッカ様がネージュ様の元に
エルナは、リッカの手を両手で包み込むようにしてキュッと力を込めた。エルナは笑みを浮かべたまま、優しい眼差しをリッカに向ける。
リッカは考える。これからもこの工房で働けるのならば、それに越したことはない。自分はそれを望んでいる。しかし、そんな自分本位な考えで結婚を決めてしまってもいいのだろうか。リゼとエルナは本当にそれで良いのだろうか。エルナの気持ちは分からない。しかし、リゼの気持ちは先ほど本人が表明した通りなのだ。
少しの間考えを巡らせた後、リッカはおずおずと口を開いた。
「本当にそれでよろしいのでしょうか? わたしが……リゼさんと……その……婚姻したとして、リゼさんのお気持ちは? エルナさんは……その……リゼさんのこと……」
リッカは不安そうな表情でエルナを見上げた。そんなリッカを安心させるように、エルナはニコリと微笑む。
「もちろんネージュ様のことはお慕いしておりますよ。ですが、国政に比べたら私の気持ちなど些細なものですから」
「エルナさん……」
「リッカ様、お気になさらず。本当に私など些細なことなのですから」
そう言って笑うエルナに、リッカはそれ以上何も尋ねることはできなかった。代わりに向かいに座るリゼに目を向けると、リゼは真っ赤な顔で目をパチパチと瞬かせている。
「え? あ? エルナさん?」
ドギマギとしているリゼに、エルナはいたずらっぽい笑みを向ける。
「どうかなさいました? ネージュ様」
「いや……その……何でもないです……」
どうやらリゼもエルナの気持ちは知らなかったようだ。そんな二人のやり取りを見ていたリッカは、やがてゆっくりと口を開いた。
「あの……やはり、わたしは……」
小さく息をつくと目を伏せる。そんな様子を見ていたリゼが小さくため息をついた。
「まぁ……君の好きにするといい。だが、私はこの婚姻に利があると判断していることも忘れるな」
リッカはゴクリと唾を飲み込む。
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