第94話 新人魔女と使い魔の特訓(6)
「魔力の一部を分ける? そんなことが可能なんですか?」
リッカの疑問にグリムは淡々と答える。
使役獣や使い魔は、多かれ少なかれ主の魔力の影響下にいる。そのため、主人の魔力であれば、分け与えることが出来るらしい。そして、それは魔力値の強い使い魔や使役獣であればあるほど可能になる。
ただし、使役獣は主の魔力の影響下に置かれているといっても、所詮は別個体。一度に分け与えられる魔力量には個体差があり、多く魔力を与えすぎると、自身と主人の魔力相違によって、自我を失い暴走する危険性もあるらしい。その点、使い魔は完全に主人と魔力が繋がっているので、暴走の心配はない。
グリムの説明を聞き終えたリッカは、なるほどと感心する。リッカは魔犬に目を向けた。魔犬の毛並みはまだ少しボサついているものの、かなり綺麗になっている。
「この子は、もう大丈夫と言うことでしょうか?」
「まぁ、そやな。この様子なら明日には元通りになってるやろ。けど、今日は終いや。そいつ、寝床に戻そか」
グリムは、魔犬の首元の赤い石を再びポンと触る。直後、魔犬の姿は霧のように消えていった。後に残ったのは、赤い宝石だけ。魔犬は宝石の中に戻ったのだった。
リッカは、魔犬の入った石を拾うと、お疲れ様と小さく労いの言葉をかける。そして、グリムの方を振り返った。
「グリムさんも、フェンの特訓に付き合って頂いて、ありがとうございました」
リッカがグリムに頭を下げると、グリムはニヤリと笑う。
「おう。まぁ、わいは何もしとれへんけどな」
「いいえ。そんな事はないですよ。グリムさんには、リゼさんの代わりを勤めて頂いたようなものですから。私たちだけの特訓では、フェンが新しい魔法を使えるようになっていたか分かりません」
リッカの言葉に、グリムは苦笑いを浮かべる。
しかし、リッカの言う事は、何も間違っていない。魔法を習得するには、実践経験が一番なのだ。一般的には、アカデミーなどで魔力の扱い方と、初歩的な魔法を学ぶのだが、その後の経験値を伸ばすには、やはり実戦での経験に勝るものはない。何をどのように経験していくかで、魔法を使う者のその後は決まってくる。
治癒魔法に特化する者。攻撃魔法に特化する者。身体強化に特化する者。治癒と攻撃のどちらも使える万能型など、様々な形でその者の魔法は完成していく。
リッカは、使い魔であっても魔法を習得する過程は、人と変わりないのではないかと考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます