第60話 新人魔女と怪しい店(4)
リッカは、ベッドサイドに置いてある時計を見る。時刻は午後二時を回ったところだった。まだ市場が閉まるまでには時間がある。
このまま魔力の自然回復を待つよりは、高価でも市販の魔力回復の薬を買ってきた方が良いかもしれない。
「フェン。これから街へ行きましょう。ミーナさんのお店へ行けば、きっと魔力回復薬を手に入れられるわ」
「はい! 分かりました!」
元気良く返事をするフェンに、リッカは小さく笑う。
リッカはベッドから降りるとクローゼットの中から外出着を取り出し着替える。そして、鏡の前で髪を整えてから部屋を出た。
屋敷を出て、王都の街へとやってきたリッカは、早速目的の場所へと向かう。
大通りはいつでも人で賑わっている。いつもならば人波の間を縫うように歩きながら、リッカは道端の露店や店先の看板を見ながら歩く。リッカにとって、街はいつも発見の場所である。今まで見たことのないもの、食べたことのないものが溢れていて、リッカはそれらを見て歩くだけでも十分に楽しいと思っていた。
しかし、今日はいつもよりも足取りが重い。道草を食わず、早々に回復薬を購入しに向かった方が良さそうだ。
目的地であるミーナの店は、街の中心近くにあるため、もうしばらく街中を歩かなければならない。
早く到着することを願いつつも、気持ちとは裏腹に、歩みはなかなか進まない。
(魔力枯渇がこれほどまでに辛いとは……)
リッカは額にうっすらと汗を滲ませながら、なんとか前に進む。
リッカの足下をトテトテと歩いていたフェンが心配そうに、リッカを見上げたちょうどその時、突然リッカが立ち止まった。誰かに腕を掴まれて引き止められた様だ。
驚いたリッカが振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。背が低く、腰が曲がっている。纏っているローブも薄汚れていて、どこか怪しい雰囲気の男だ。
リッカは反射的に手を振り解き、一歩後退る。すると、すかさずその分だけ距離を詰められた。男は、リッカの顔をじっと見つめてくる。
(な、何……)
男の視線が不快で、リッカは眉根を寄せて不快感を表す。しかし、男は全く気にする様子もなく、さらにぐいっと顔を寄せてきた。
「お嬢ちゃん、随分と顔色が悪くないかい?」
心配そうな表情を浮かべているが、リッカは、その表情にすら嫌悪感が湧き上がる。
「だ、大丈夫です……」
なんとか平静を装ってそう答えるが、男の顔が離れることはない。それどころか、ますます近付いてくる。
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