第36話 新人魔女と憧れのあの人(4)
口の広い空の瓶を取り出し、その中にリッカはそっと魔石をしまい込んだ。
「これでリゼさんが納得してくれるといいけど……」
「リゼラルブ様にお渡しするのですか?」
リッカの言葉にフェンは首を傾げた。
「ええ。だって、リゼさんが欲しがっている体液は手に入りそうにないでしょう?」
辺りを見回しながら眉尻を下げたリッカに、フェンも頷く。
「そうですね」
「でもこれは、体液となる前の魔獣の核なのだから、これでも代用できるのじゃないかしら?」
リッカはそう言うと、立ち上がった。
「さて、それじゃあ街へ行きましょうか」
リッカとフェンは森を出て街へと戻った。門兵に声をかけると、リッカはフェンを連れて街へ入る。そのまま大通りを歩き、店が並ぶ区域へ足を踏み入れた。
人通りの多い道は活気に溢れており、リッカは自然と笑顔になる。今日は天気が良いせいだろうか、行き交う人々は皆上機嫌に見える。すれ違う人とぶつからないように気をつけながら、リッカは歩く速度を落としつつ、きょろきょろと周囲を見回した。わくわくとした気持ちで店を眺める。
しかし、リッカはすぐに困ったような表情を浮かべた。
(どのお店が素材を買い取ってくれるのかわからない……)
リッカは冷や汗を流した。
工房で働くようになってから、まだ一度も素材の売却をしたことがないのだ。どのお店で買い取ってくれて、どんな商品を売っているのかなど、知らない。リッカは立ち止まり、腕を組んで考え込んでしまった。
そんなリッカの様子に、隣にいたフェンは不思議そうな顔をしながら声をかける。
「リッカ様。どうされたのですか?」
「ああ、フェン。ごめんね。ちょっと困っちゃって」
リッカは苦笑すると、頬を掻いた。
「リッカ様は素材を売りに来たのですよね? 何故迷われるのですか?」
「だって、どのお店が素材買取をしているか、わたし知らないんだもの」
リッカの言葉を聞いたフェンは、ぱちくりと瞬きをした後、首を傾げた。
「どなたかに聞いたらどうでしょう? こんなにたくさんの人がいるのですから、誰かは知っていたりしませんか?」
フェンの言葉に、今度はリッカが目を丸くした。確かにそうだ。リッカは小さく笑うと、「それもそうね」と呟いて、誰に声をかけようかと周りの人をぐるりと見回した。
そして、周囲の人よりも一際ガタイの良い男性の姿を見つけたリッカは、パッと顔を輝かせた。
リッカは冒険者のような男性に駆け寄ると、勢いよく声をかけた。
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